クレウーサ
クレウーサ(古希: Κρέουσα, Kreoūsa, ラテン語: Creusa)は、ギリシア神話に登場する女性の名。この名前は「王女」を意味し、ギリシア神話には同名の女性が4人いる。長母音を省略してクレウサとも表記される。
ガイアの娘
編集ガイアの娘にあたるナーイアスのクレウーサは、河神ペーネイオスとの間にラピテース族の王[1]ヒュプセウスと娘スティルベー[2]、ダプネーを生んだ[3][4]。
ヒュプセウスはアステュアギュイア[5]、キューレーネー[6][7]、テミストーの父[8][9][10][11]。
スティルベーはアポローンとの間にラピテースとケンタウロスを生んだが[2]、ダプネーはアポローンの愛を拒んで月桂樹となった[12][4]。
クレオーンの娘
編集コリントス王クレオーンの娘クレウーサは、メーデイアと離婚したイアーソーンと結婚することになる。しかし、メーデイアは呪いをこめた衣裳をクレウーサに贈ることによって復讐を果たす。この呪いにより、衣裳はクレウーサの肉体に貼りつき、脱ごうとするやいなや彼女を燃やした。アポロドーロスの『ビブリオテーケー』などではグラウケーという名で知られる[13]。
エレクテウスの娘
編集アテーナイ王エレクテウスの娘のクレウーサ[14][15]。母はプラークシテアーで、ケクロプス、パンドーロス、メーティオーン、プロクリス、オーレイテュイア、クトニアーと兄妹[14]。姉妹たちはアテーナイを守るために死んだが、クレウーサは幼かったので助かった。クレウーサはクスートスと結婚し、息子アカイオスとイオーン[16]、娘ディオメーデーがいた[17]。
エウリーピデースの『イオーン』ではクレウーサは重要な登場人物で、アポローンとの間にイオーンを、夫クスートスとの間にアカイオスとドーロスをもうけた。アポローンをイオーンの父とする文献はこれのみである。
プリアモスの娘
編集プリアモスの娘クレウーサ[18]は、アイネイアース(ラテン語:アエネーアース)の妻で、アスカニオス(ラテン語:アスカニウス)の母。ウェルギリウスの叙事詩『アエネーイス』では、ギリシア軍によってトロイアが略奪されたさい、夫と我が子、アンキーセースとともにトロイアを脱出しようとするが、途中ではぐれて死ぬ。アイネイアースは無事に脱出したのち再びトロイアに戻り、クレウーサを探した。そこにクレウーサの霊が現れて語りかけ、新天地に向けて出港することを促して消える[19]。
脚注
編集- ^ ピンダロス『ピュティア祝勝歌』第9歌14行。
- ^ a b シケリアのディオドーロス、4巻69・1。
- ^ オウィディウス『変身物語』1巻。
- ^ a b ヒュギーヌス、203話。
- ^ シケリアのディオドーロス、4巻69・3。
- ^ ピンダロス『ピュティア祝勝歌』第9歌13行1-18行。
- ^ シケリアのディオドーロス、4巻81・1。
- ^ アポロドーロス、1巻9・2。
- ^ ヒュギーヌス、1話。
- ^ ヒュギーヌス、239話。
- ^ ヒュギーヌス、243話。
- ^ オウィディウス『変身物語』1巻452行-567行。
- ^ アポロドーロス、1巻9・28。
- ^ a b アポロドーロス、3巻15・1。
- ^ パウサニアース、1巻28・4。
- ^ アポロドーロス、1巻7・3。
- ^ アポロドーロス、1巻9・4。
- ^ アポロドーロス、3巻12・5。
- ^ ウェルギリウス『アエネーイス』2巻673行-794行。