チェルノブイリ1986
『チェルノブイリ1986』(ロシア語: Чернобыль)は、2021年のロシアの歴史ドラマ・ディザスター映画[1][6][7]。監督・主演はダニーラ・コズロフスキーが務めている[8]。リクビダートルとなった消防士の視点からチェルノブイリ原子力発電所事故を描いた作品であるが[9]、物語自体は登場人物を含めて史実を題材としたフィクションとなっている[10]。
チェルノブイリ1986 | |
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Чернобыль | |
監督 | ダニーラ・コズロフスキー |
脚本 |
アレクセイ・カザコフ エレナ・イワノヴァ |
製作 |
アレクサンドル・ロドニャンスキー ダニーラ・コズロフスキー セルゲイ・メルクモフ バディム・ベレシャギン ラファエル・ミナスベキアン |
出演者 |
ダニーラ・コズロフスキー オクサナ・アキンシナ フィリップ・アヴデーエフ ラフシャナ・クルコヴァ ニコライ・コザック |
音楽 | オレグ・カルパチェフ |
撮影 | クセニヤ・セレーダ |
編集 | マリヤ・リハチョヴァ |
製作会社 |
セントラル・パートナーシップ[1] Gpmキット ノンストップ・プロダクション |
配給 |
セントラル・パートナーシップ ツイン |
公開 |
2021年4月15日[2] 2022年5月6日 |
上映時間 | 136分 |
製作国 | ロシア |
言語 | ロシア語 |
製作費 | ₽ 689,000,000[3][4] |
興行収入 | ₽ 389,976,273[5] |
ストーリー
編集1986年。プリピャチの消防士アレクセイは10年前に別れた恋人オリガと再会し、彼女との間に10歳になる息子アリョーシャがいたことを知る。アレクセイはオリガとの関係修復を目指すが、3人で行くはずだったピクニックの約束を反故にしたことでオリガに呆れられ、新たな任地キエフへの同行も拒否されてしまう。その日の夜、アリョーシャはアレクセイからもらったカメラを持ち友達と出かけ、そこでチェルノブイリ原子力発電所が爆発する姿を目撃する。4月26日未明、オリガとの復縁が叶わなかったアレクセイは一人でキエフに向かおうとするが、爆発音と墜落する大量の鳥を見て異変を察知し、通りかかった消防車に乗り込みチェルノブイリ原子力発電所に向かう。消火活動に加わるアレクセイだったが、先に到着していた同僚のミハイルたちが次々に被曝し、アレクセイは彼らと共に病院に搬送される。
到着が遅かったことで重度の被爆を免れたアレクセイは、原子力発電所の火災点検で通路内を把握していたことから、専門家の一人として事故対策委員会に呼び出される。彼は、そこで爆発事故が過去に例を見ないほどの重大事故であり、貯水タンクに原子炉が落下すれば水蒸気爆発の発生によって放射性物質がヨーロッパ全域に飛び散る危険性があることを聞かされる。委員会は貯水タンクの水を放出して原子炉爆発を防ごうと考えて作業志願者を募るが、アレクセイは危険性の高い作業に従事することを拒否して委員会を後にする。そのころ、プリピャチ一帯には避難命令が出され、オリガ、アリョーシャと合流したアレクセイは住民たちと共に町を脱出しようとするが、アリョーシャが被爆していることが判明する。アレクセイは「作業に参加すれば、特権としてスイスで最新の放射線治療を受けさせる」という委員会の条件を思い出し、オリガと別れて委員会に戻り、「自分の代わりに息子に治療を受けさせる」という条件で作業に参加することを承諾する。
4月28日、アレクセイはニキータ、ヴァレリィ、ボリス大佐と共に発電所内に入り制御盤の電源を入れて水を放出しようと試みるが、途中でニキータが命を落としてしまう。残った3人は浸水が進む動力室で制御盤の電源を入れることに成功するが、排水ポンプが作動せず作戦自体は失敗してしまう。ボリス大佐は手動で水の放出を試みて一人で他の部屋に向かうが、そこで大量の放射線を浴びてしまい、病院に向かう途中で死んでしまう。病院に到着したアレクセイはオリガと再会し、スイス行きの飛行機に搬送されるアリョーシャを2人で見送る。アリョーシャが飛び立った後、アレクセイはオリガと一夜を過ごし、委員会に戻っていく。アレクセイとヴァレリィは新たなチームと共に再度原子力発電所内に入り、2人で協力して水没した通路に進み、手動で排水バルブを動かすことに成功するが、地上に戻る前にヴァレリィは水死してしまう。彼は死ぬ間際にアレクセイを救うため命綱を切断するが、アレクセイはヴァレリィを助けるため通路に戻っていく。水が放出された後、アレクセイはヴァレリィの遺体と共にレスキュー隊に発見されるが、大量の放射線を浴びていたため隔離される。オリガは放射線医ジーナの計らいで隔離施設に呼ばれ、死ぬ間際のアレクセイと再会する。
3か月後、スイスでの治療を終えて回復したアリョーシャがキエフに到着し、オリガはアリョーシャを出迎える。
キャスト
編集括弧内は日本語吹替版の声優[11]。
- アレクセイ・カルプーシン - ダニーラ・コズロフスキー(小山力也)
- オリガ・サヴォスティナ - オクサナ・アキンシナ(大関英里)
- ヴァレリィ - フィリップ・アヴデーエフ(峰晃弘)
- ジーナ - ラフシャナ・クルコヴァ(上絛千尋)
- ボリス・ボブリン大佐 - ニコライ・コザック(中村和正)
- ニキータ - マクシム・ブリノフ
- トローピン - イゴール・チェルニェヴィッチ
- ミハイル - アルトゥール・ベシャストニィ
- ティグラン - サムヴェル・タデヴォシアン
- ユーリィ - ドミトリー・マトヴェーエフ
- イワン - アレクサンドル・アリャベーエフ
- コーリャ - ニコライ・アムソノフ
- セメン - パーヴェル・ダヴィドフ
- ドミトリー - ニキータ・カルピンスキー
製作
編集プロデューサーのアレクサンドル・ロドニャンスキーはドキュメンタリー監督としてチェルノブイリ原子力発電所事故の発生直後に現地入りして撮影した経験を持ち、目にした光景を映画化することを「長年の夢」として抱いていた[8]。2015年に『チェルノブイリ1986』の完成稿を受け取ったロドニャンスキーは、『ヴァイキング 〜海の覇者たち〜』に出演中だったダニーラ・コズロフスキーに脚本を送り、出演を依頼した。ニューヨーク・タイムズの取材を受けたコズロフスキーは、当初は出演に消極的だったものの、脚本を読み進めるうちに「私たちの国の歴史にとって影響を与えるほど重要な出来事であり、今も複雑な問題を抱えていることを理解した」という[8]。2019年に放送されたテレビシリーズ『チェルノブイリ』では事故の実態を隠蔽しようとするソ連政府の姿を詳細に描いていたが、ロドニャンスキーとコズロフスキーは『チェルノブイリ1986』では政治的要素よりも、現地で事故の拡大を防ぐために尽力した人々(リクビダートル)の人間ドラマを描くことに焦点を当てた[8]。
2019年6月から8月13日にかけてクルスク州のクルスク原子力発電所、モスクワ、ブダペスト、クロアチアで撮影が行われ[12][13][14]、製作に際してはロシア映画財団とロマン・アブラモヴィッチの映画財団キノプライムから資金援助を受けている[3][4][8][2]。製作中のワーキングタイトルは『Опасная вода』『Когда падали аисты』だった[4][12]。
公開
編集ロシアではセントラル・パートナーシップ配給で2020年10月8日に公開が予定されていたが[12]、COVID-19パンデミックの影響を受けて延期され[15]、2021年4月15日に公開された[1][5][10][2]。北米ではケープライト・ピクチャーズ配給で2020年7月に公開され[16]、2021年6月3日からはNetflixで配信が開始された[17][8][9][18]。日本ではツイン配給で2022年5月6日に公開され、同社は収益の一部をロシアの軍事侵攻の被害を受けたウクライナへの人道支援活動のために寄付することを発表した[19]。なおロドニャンスキーはウクライナ人であり、コズロフスキーは戦争反対を表明している[19][20]。
評価
編集ロシアの批評家からの評価は賛否両論となっている[21][22]。CBCニュースのクリス・ブラウンは『チェルノブイリ1986』について「時機を逸した作品」であり、「ソ連政府が被害の大きさを隠蔽するために行った不法と嘘を軽視している」と批評した[9]。ニュー・ミュージカル・エクスプレスのマーク・ビューモントは「『ワールド・トレード・センター』のスケールと『タイタニック』の結末を持つ古典的なディザスター映画」と評価する一方、ソ連政府に対する批判を抑えたフィクション色の強い作風については「ハリウッドは何十年も歴史を書き換えてきた。同じことをする他人を批判できるのか?」と擁護している[18]。ニューヨーク・タイムズのヴァレリー・ホプキンスは、「HBO製作の『チェルノブイリ』が事故を引き起こしたソビエト体制の欠陥を暴くものだったのに対し、ロシア製作の『チェルノブイリ1986』は個人の役割、人々の個人的なヒロイズム、より高い目的への献身を強調しており、まさにロシアの馴染み深い文化的伝統に則った作りになっている」と批評している[8]。
出典
編集- ^ a b c Художественный фильм-катастрофа «Чернобыль» (Россия, 2020 год). Информация о фильме, аннотация, трейлер, кадры из фильма, постеры, видео. Официальный сайт кинокомпании «Централ Партнершип» (Россия, Москва) // centpart.ru. Дата обращения: 20 августа 2021.
- ^ a b c Vourlias, Christopher (24 February 2021). “‘Vikings’ Star Danila Kozlovsky on ‘Artistic Dream’ of Helming High-Octane ‘Chernobyl’”. Variety 2 December 2021閲覧。.
- ^ a b Художественный фильм «Чернобыль» (Россия, 2020 год). Динамика кассовых сборов, посещаемости, количества сеансов. Единая федеральная автоматизированная информационная система сведений о показах фильмов в кинозалах (ЕАИС) // ekinobilet.fond-kino.ru. Дата обращения: 20 августа 2021.
- ^ a b c Анна Афанасьева. «Последний богатырь» вернулся за субсидиями. — «Фонд кино» рассмотрит заявки продюсеров. Официальный сайт газеты «Коммерсантъ» (22 марта 2019 года)
- ^ a b “Художественный фильм «Чернобыль» (Россия, 2020 год). Кассовые сборы в России и СНГ, информация о фильме”. Информационный интернет-ресурс «Бюллетень кинопрокатчика» // kinometro.ru. 2021年8月20日閲覧。
- ^ Питчинг «Фонда кино»: какие фильмы станут будущим российской индустрии. — Обзор «Индустрии кино». // filmpro.ru (29 марта 2019 года)
- ^ Дарья Гладких. Данила Козловский снимет фильм о Чернобыльской катастрофе «Опасная вода». Сайт журнала «Собака.ru» (Санкт-Петербург) // sobaka.ru (21 марта 2019 года)
- ^ a b c d e f g Hopkins, Valerie (6 August 2021). “Chernobyl 1986: Dramatizing the Chernobyl Disaster, for Its Survivors”. New York Times 1 December 2021閲覧。
- ^ a b c Brown, Chris (4 May 2021). “New Russian film on Chornobyl nuclear disaster skips the coverup, focuses on heroes” 2 December 2021閲覧。
- ^ a b Виктория Беликова. Личная драма на фоне катастрофы: в прокат вышел «Чернобыль» Данилы Козловского. // russian.rt.com (15 апреля 2021 года). Дата обращения: 20 августа 2021.
- ^ “チェルノブイリ1986”. TWIN. 2023年3月4日閲覧。
- ^ a b c Сусанна Альперина. Данила Козловский завершил съёмки нового фильма о Чернобыле. Чем заинтригованы зрители?. Интернет-портал «Российской газеты» // rg.ru (13 августа 2019 года). Дата обращения: 20 августа 2021.
- ^ Георгий Харюнин. Вызовы «Чернобыля»: как снимали фильм о главной катастрофе XX века. Сетевое издание «Смотрим» («ВГТРК») // smotrim.ru (14 апреля 2021 года). Дата обращения: 20 августа 2021.
- ^ Артур Чачелов. Как снимали «Чернобыль» Данилы Козловского. — Локации, подводные съёмки, восстановление эпохи. Информационный интернет-ресурс «Бюллетень кинопрокатчика» // kinometro.ru (17 апреля 2021 года). Дата обращения: 20 августа 2021.
- ^ Олег Усков. Фильм-катастрофа Данилы Козловского «Чернобыль» не выйдет в этом году. Интернет-портал «Российской газеты» // rg.ru (6 октября 2020 года)
- ^ “Фильм Данилы Козловского «Чернобыль» покажут в Северной Америке. — Права на дистрибуцию приобрела компания Capelight Pictures”. Информационное агентство России «ТАСС» // tass.ru (3 июля 2020 года). 2020年7月4日閲覧。
- ^ Фильм Данилы Козловского «Чернобыль» вышел на Netflix. РИА «Новости» // ria.ru (3 июня 2021 года). Дата обращения: 20 августа 2021.
- ^ a b Beaumont, Mark (22 July 2021). 'Chernobyl 1986': assessing Russia’s big-screen riposte to the hit HBO miniseries 1 December 2021閲覧。.
- ^ a b “『チェルノブイリ1986』は予定通り公開 収益の一部をウクライナへの人道支援活動に寄付”. CinemaCafe. 2022年5月16日閲覧。
- ^ “Danila KozlovskyはInstagramを利用しています:「То, что происходит сейчас, это катастрофа. Во всех смыслах. Человеческая, гуманистическая, политическая, экономическая. Да какая угодно. Я…」”. Instagram. 2022年5月22日閲覧。
- ^ Фильм «Чернобыль» (Россия, 2020 год). Критика. Сайт «КиноПоиск» // kinopoisk.ru
- ^ Фильм «Чернобыль» (Россия, 2020 год). Рецензии на фильм, отзывы. Агрегатор рецензий «Критиканство» // kritikanstvo.ru