トウダイグサ属(トウダイグサぞく、Euphorbia)はトウダイグサ科に属する一群の植物で、園芸植物などについては学名英語風読みのユーフォルビアで呼ばれることが多い。ラテン語風読みのエウフォルビアと読ませることもある[1]

トウダイグサ属
トウダイグサ Euphorbia helioscopia
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 core eudicots
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : バラ上群 superrosids
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : rosid I / Fabidae
: キントラノオ目 Malpighiales
: トウダイグサ科 Euphorbiaceae
亜科 : トウダイグサ亜科Euphorbioideae
: トウダイグサ属 Euphorbia
学名
Euphorbia L.
シノニム

Chamaesyce
Elaeophorbia
Endadenium
Monadenium
Synadenium
Pedilanthus

本文参照

代表的な種としては、日本に野生するトウダイグサ灯台草: 形が燭台に似ることから)、タカトウダイノウルシ、観賞用に栽培するポインセチアショウジョウソウハツユキソウハナキリンミドリサンゴ(ミルクブッシュ)などがある。

学名Euphorbiaは、ヌミディアユバ2世に仕えたギリシャ医師エウポルボスに由来する[2]。ユバ2世の一人目の妻はマルクス・アントニウスクレオパトラ7世の娘クレオパトラ・セレネである。エウポルブスはサボテンに似たユーホルビア植物が強力な瀉下薬となることを記した[2]。紀元前12年、侍医のアントニウス・ムーサ英語版(エウポルブスの兄弟で、アウグストゥスの侍医)の像を作ったアウグストゥスに応えて、ユバ2世は、この植物の名前をエウポルブスから名付けた[2]。植物学者のカール・フォン・リンネが後の植物分類の基礎となる『植物の種』(Species Plantarum; 1753年) において属名として用い[3]、エウポルブスを顕彰し、この「Euphorbia」を属名として採用した。弟のアントニウス・ムーサの名前は、バショウ属の由来とされる。

ユバ2世自身は、芸術および科学の著名なパトロンであり、いくつかの探検や生物学的研究の後援をしていた。彼はまた著名な作家であり、博物学に関する論文や最もよく売れたアラビアへの旅行案内といったいくつかの専門書や一般向けの学術書を書いている。Euphorbia regisjubae(ユバ王のEuphorbia)は、博物学におけるユバ王の貢献とこの属を表に出した彼の役割を称えて命名された。

特徴

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杯状花序を示す花式図

世界の熱帯から温帯に広く分布し、約2000種の草本または低木からなる巨大な属である。

は退化傾向が著しく、雄蕊または雌蕊1本だけからなる。これら(雌花1個、雄花数個)が集まり苞に囲まれた杯状花序という特有の花序を形成する。苞には蜜腺があり、花序全体が1つの花のように見える。さらにポインセチアなどでは花序近くの包葉が赤・黄・白などに着色して目立つ。

切ると乳液を出すが、有毒物質(ホルボールエステルインゲノールエステル等)を含み、皮膚につくとかぶれることもある。

砂漠から湿地まで様々な環境に適応進化し形態的に多様である。特に砂漠に生育するものでは、Euphorbia horridaEuphorbia validaEuphorbia obesaなどのように、が退化しが多肉となってサボテンに似ているものもあり、収斂進化の好例である。

分類

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形態のやや異なるニシキソウ亜属を独立の属とすることも多いが、分子系統学的には必ずしも支持されていない。

日本には約20種があるが、どれも草本で、直立して飾りの包葉の付いた複雑な花序を広げるトウダイグサの類とやや這う草本のニシキソウの類がある。

トウダイグサに類するもの:立ち上がる草本で、葉は茎の周りにつき、先端は多数枝分かれして広がり、飾りの包葉に囲まれて花序が付く。

ニシキソウに類するもの:やや這う草で、茎にそって水平に葉を多数だし、花序は葉の基部に小さく付く。

このほかに園芸植物として栽培されているものに

があり、

また多肉植物として栽培されるものに、

などがある。

利用

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トウダイグサ属の植物のうち、多肉化する種は何種類も園芸植物として流通しているが、#保全状況評価で後述するように国際的な取引に制限が設けられるものも存在する。

東アフリカではランガク[15]Euphorbia abyssinica; エチオピアエリトリアで)、チュウテンカク[16]E. ingens; ウガンダ、エチオピア、ケニアで)、E. polyacantha(エリトリアで)、ミドリサンゴE. tirucalli; ウガンダ、エチオピア、エリトリア、ケニア、ザンビア、タンザニアで)が有用植物として知られている[17]。また、チュウテンカクや E. veneficaヤドクキリンE. virosa)は矢毒として用いられ、ジンバブエではチュウテンカクの乳液が毒流し漁に利用されたり、煮沸後に獣脂と混ぜ合わせてトリモチとされたりする(Drummond et al. 1975)[18]

保全状況評価

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ワシントン条約(CITES)附属書掲載の種

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絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(通称: ワシントン条約、CITES)のうち商業的な国際取引を一切禁じる附属書Iに掲載されているものは以下の通りである[19]

またCITESの附属書II(国際的な取引に両国の許可が必要となりえる)には多肉化するトウダイグサ属の種全体が記載されており、例外は Euphorbia misera および先述の附属書I掲載種のみである[19]。ただし、附属書IIの適用対象となる種であっても、

であれば、条約の条項の対象とならない[19]

IUCNレッドリスト

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IUCNレッドリストに掲載されているトウダイグサ属植物のうち、近絶滅種Critically Endangered)の評価が下されたことのある種は以下の通りである。この中には園芸植物として流通しているものも複数含まれる。

  • Euphorbia alcicornis (ver. 3.1) - マダガスカルに生育していたが、1880年以来確認されておらず、既に絶滅している可能性がある。ただし野生絶滅したとする研究は存在しない。E. alcicornis の名前で栽培されている標本も見られるが、それらは全て誤同定されたものである[36]
  • E. anachoreta (ver 3.1) - ポルトガルセルヴァージェンス諸島英語版: Ilhas Selvagens)のうち Ilhéu de Fora に固有の低木であるが、個体数の規模が極めて限定的で、生育地が隔絶されているために将来の気候変動に適応できるかが懸念されている[37]
  • E. ankazobensis (ver 3.1) - マダガスカルのアンカズベ英語版(Ankazobe)にしか生育していないと思われ、野生絶滅する可能性が高い[38]
  • E. berorohae (ver 3.1) - マダガスカル南西部のベルルハ英語版(Beroroha)で1933年と1990年代のたった2度しか採取されていない種で、その生育地も火事が起きたり切り払いが行われたりする[39]
  • E. boinensis (ver 3.1) - マダガスカル西部に生育していたが、1900年と1920年に採取されたものしか知られておらず、また栽培品も知られていないために既に絶滅している可能性がある[40]
  • E. capmanambatoensis (ver 3.1) - マダガスカル北東部の Cap-Manambato にしか見られず、発生面積も占有面積も極めて小さく、商取引を目論んで違法採集される傾向にある[41]
  • E. cap-saintemariensis(エウフォルビア・カプサインテマリエンスィス)(ver 3.1) - #ワシントン条約(CITES)附属書掲載の種を参照。
  • E. deppeana (ver 3.1) - ハワイ諸島オアフ島の固有種であるが、個体数は50未満で外来種との競合も脅威となっている[42]
  • E. eleanoriae (ver 3.1) - ハワイ諸島のカウアイ島の固有種であるが個体数は500未満(うち成熟しているものは250未満)で、野生化したヤギ侵略的外来植物が脅威となっている[43]
  • E. francoisii(ユーフォルビア・フランコイシー)(ver 3.1) - #ワシントン条約(CITES)附属書掲載の種を参照。
  • E. geroldii (ver 3.1) - マダガスカルの Iharana 周辺の海岸林にのみ生育するが、放火を含む災害の影響を受けやすい[44]
  • E. halemanui (ver 3.1) - ハワイ諸島のカウアイ島の固有種であるが、外来植物との競合やブタ、ヤギ、シカによる生育環境の悪化に脅かされている[45]
  • E. heleniana (ver 3.1) - セントヘレナに見られるが発生面積が100平方キロメートル未満である[46]
  • E. herbstii (ver 3.1) - ハワイ諸島のオアフ島の固有種であるが、ブタ、ヤギ、火事、外来植物に脅かされている[47]
  • E. iharanae (ver 3.1) - マダガスカルのIharana地区、E. capmanambatoensis の自生地からそう遠くない場所に生育するが占有面積も発生面積も極めて小さく、人間の活動で脅かされており、園芸植物市場のために採集が行われている[48]
  • E. kondoi (ver 3.1) - マダガスカル南西部のトゥリアラ地域に見られるが、生育地は断片化が進んでいる[49]
  • E. labatii (ver 3.1) - マダガスカルの Tsingy of Ankarana 南東部のみに見られる[50]
  • E. millotii (ver 3.1) - マダガスカルの Iharana の南にのみ生育するが、生育地の海岸低木林は人間の活動により著しく脅かされており、栽培への需要も手伝って野生絶滅する恐れがある[51]
  • E. neospinescens (ver 3.1) - タンザニアのChunya地区で1899年と1942年に採取されたのみでそれ以来確認されておらず、生育地が農地とされ、万が一絶滅していない場合は収集家や愛好家に狙われる恐れがある[52]
  • E. origanoides (ver 3.1) - セントヘレナ・アセンションおよびトリスタンダクーニャアセンション島固有種であるが、2016年以前に10年以上も発生面積や占有面積の減少が観測され、歴史的に見ても1900年以来副次集団が減少している[53]
  • E. pachypodioidesユーフォルビア・パキポディオイデス[54])(ver 3.1) - マダガスカルの Tsingy of Ankarana にのみ見られるが、園芸植物としての需要が大きく、占有面積が7.8平方キロメートル、たった一箇所でしか生育が見られないこと、減少を続けていることから近絶滅種と評価されている[55]
  • E. parvicyathophora(エウフォルビア・パルヴィキュアトフォラ)(ver 3.1) - #ワシントン条約(CITES)附属書掲載の種を参照。
  • E. pirahazo (ver 3.1) - マダガスカル西部に見られたが、1904年よりも前にゴム生産のために過剰採取されてから採集されておらず、しかも Denis (1921) は火事のせいでほぼ絶滅したとしている[56]
  • E. quitensis (ver 3.1) - エクアドルに固有の地上性草本であるが、確実であるのはW・ジェイムソン(W. Jameson)によって1862年より前にタイプ標本の採取が記録されたことのみで、エクアドルの博物館に標本の所蔵はなく、生育地の破壊以外の脅威は知られていない[57]
  • E. remyi (ver 3.1) - ハワイ諸島のカウアイ島の固有種であるが、野生化したヤギやブタ、シカ、侵略的外来植物により脅かされている[58]
  • E. rockii (ver 3.1) - ハワイ諸島のオアフ島の固有種で、コオラウ山脈にのみ見られる低木(時に高木)であるが、生育地共々外来植物や野生化したブタにより脅かされている[59]
  • E. tanaensisタナガワトウダイグサ[60])(ver 2.3) - ケニア東部のヴィツウ森林保護区英語版: Witu Forest Reserve)内にのみ数本が生育する[61]。詳細は当該項目を参照。
  • E. tulearensis(ユーフォルビア・トゥレアレンシス)(ver 3.1) - #ワシントン条約(CITES)附属書掲載の種を参照。

また、トウダイグサ属には園芸植物として流通しているものが何種も存在するが、同リストに絶滅危惧種(Endangered)以下近危急種(Near Threatened)以上の評価で掲載されたことのあるものは以下の通りである。

その他の構成種

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E. milii × E. moratii

脚注

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注釈

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  1. ^ なお、命名者の異なる E. croizatii (Hurus.) Kitag. は米倉・梶田 (2003-) ではイトバトウダイ(別名: マツバトウダイヒメトウダイ; 学名: E. kaleniczenkii Czern. ex Trautv.)のシノニムとされているが、ミズーリ植物園はこの E. kaleniczenkiiセイヨウハギクソウ(学名: E. esula)のシノニム扱いとしており[67]キュー植物園World Checklist of Selected Plant Families (WCSP)E. croizatii (Hurus.) Kitag. や E. kaleniczenkii var. nana Hurus. を、ロシア中国北東部に分布するセイヨウハギクソウの変種 E. esula var. cyparissioides Boiss. のシノニムとしている[68]

出典

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参考文献

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日本語:

英語:

関連文献

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英語:

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フランス語:

関連項目

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外部リンク

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