ドンフアン池(ドンフアンいけ、Don Juan Pond)は南極ビクトリアランドライト谷南枝の西端部(バンダ湖の西およそ 9 キロメートル)にある、小さくてしかも非常に浅い湖沼である。南側をアズガルド山脈、北側をダイス峠(コル)に囲まれている。西端には小さな支流と岩石氷河と呼ばれる特徴的な地形がみられる。塩分濃度は 40% を超え、これは判明している限り地球上の水体のなかで最も高い[1][2]ドンファン池ドンフアン湖ドンファン湖などとも呼ばれる。

ドンフアン池
Don Juan Pond
衛星写真
ドンフアン池の位置(南極大陸内)
ドンフアン池
ドンフアン池
位置 南極大陸東部
座標 南緯77度33分55秒 東経161度11分26秒 / 南緯77.56528度 東経161.19056度 / -77.56528; 161.19056座標: 南緯77度33分55秒 東経161度11分26秒 / 南緯77.56528度 東経161.19056度 / -77.56528; 161.19056
種類 超塩湖
(南極大陸)
延長 300 m
最大幅 100 m
面積 0.03 km²
水量 3000 m³
凍結 ほとんど凍らない
無し
主な沿岸自治体 バンダ基地
(東へ14 km)
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人が訪れたのは1961年であり、池の調査団を輸送した二人のヘリコプター操縦士ドン・ロー中尉(Lt Don Roe)とジョン・ヒッキー中尉(Lt John Hickey)にちなんで命名された(Juanは英語のJohnに対応するスペイン語名である)。発見時、池の水温は摂氏マイナス30度だったが凍っていなかったという。

塩分濃度

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ドンファン池は浅く、底部も平面状の超塩湖であり、死海ジブチ共和国アッサル湖より高濃度(これは、バンダ湖その他のマクマードドライバレーの多くの湖沼に当てはまる)の塩分を持つ。死海の塩分濃度が海水の 9.6 倍であるのに対してドンフアン池のそれは 18 倍以上と言われている。ドンフアン池が南極の低温においても滅多に凍ることのない唯一の塩湖であるいう事実は、世界中の塩湖の中でもトップランクの塩濃度を持っていることを意味する。ここは地下水が湧出する場所だと解釈されている。湖水の塩成分はカルシウムナトリウムである。池の周辺は、水分が蒸発した後の食塩塩化カルシウムで囲まれている。池の面積や水量は刻々と変化している。1977年の米国地質調査所 (USGS) 地形図では、その面積が 0.25 平方キロメートルだった。だが、近年面積は減少してきている。1993年から1994年にかけての水深は 30 センチメートルだったが1997年1月の調査では 10 センチメートルに減少し、1998年12月には数十平方メートルの箇所を除いてほとんど水が無くなってしまった。残った水のほとんどは池の中の大きな塩の塊の周囲にできたくぼみの中だった[3]

計算された湖水の成分は、水温がマイナス 51.8 ℃の時、CaCl2 が3.72 mol/kg で NaCl が 0.50 mol/kg だった[1]。これは湖水 1 kg 中の重さに換算すると CaCl2 が 413 グラム、NaCl が 29 グラムとなる。

南極石

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1963年に日本の調査団がドンフアン池の水中から採取した無色透明な鉱物が後に新鉱物に認定され、南極石 (Antarcticite) と命名された。

脚注

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  1. ^ a b G.M. Marion (1997). “A theoretical evaluation of mineral stability in Don Juan Pond, Wright Valley, Victoria Land”. Antarctic Science 9 (01): 92–9. doi:10.1017/S0954102097000114. http://journals.cambridge.org/action/displayAbstract?fromPage=online&aid=220255. 
  2. ^ Don Juan Pond and Lake Vanda Photo Gallery by Suze at pbase.com”. 2015年3月24日閲覧。
  3. ^ Title unknown” (csv). McMurdo Dry Valleys Long-Term Ecological Research. 2012年10月28日閲覧。

参考文献

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  • 山県登,鳥居鉄也,村田貞雄. “Report of the Japanese summer parties in Dry Valleys, Victoria Land, 1963–65; V – Chemical composition of lake waters(英文)”. Antarctic Record 29: 53–75. 
  • 吉田榮夫 (2001). “マクマード・オアシス -日本人研究者によるドライバレー地域調査小史-”. 地球環境研究 3: 01–08. 
  • 井上源喜 (2008). “南極マクマードドライバレーの有機地球化学的研究”. 日本有機地球化学会 学会誌 23/24: 53–71. 

外部リンク

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ドンフアン池は画面左下隅部近く
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