ラド
ラド (rad) は、CGS単位系における吸収線量(吸収した放射線の総量)の非SI単位であり、0.01 グレイ (Gy)である。radは「radiation」または「radiation absorbed dose」の略である。
rad | |
---|---|
記号 | rad または rd [注 1] |
度量衡 | メートル法 |
系 | 非SI単位 |
SI | 0.01 Gy |
定義 | 物質 1 kg あたり放射線エネルギー 0.01 J を与える吸収線量 |
由来 | ネズミを殺すのに必要なX線の吸収線量 |
語源 | radiation または radiation absorbed dose |
位置づけ
編集ラドは、国際単位系国際文書(2019年版)では、全く言及されていない単位である。日本の計量法においては、法定計量単位となっているが、SI単位であるグレイ (Gy)を使う方がよい[1]。 米国のNISTのSP811は、ラド、キュリー(en:curie)、レントゲン(en:roentgen)、レム(en:rem)の使用を避けるように強く("strongly discouraged")呼びかけている[2]。
単位記号
編集ラドの単位記号は、rad である。しかし角度の単位であるラジアンの単位記号 rad と同一であるので、紛らわしい場合は、rad に替えて rd を使うことができるとされていた[3]。
定義
編集計量法でも国際単位系 (SI) でも、ラドの定義は、グレイの1/100 である[4]。グレイの定義は、「電離放射線の照射により物質1 kg につき1 J の仕事に相当するエネルギーが与えられるときの吸収線量」[5]であるから、ラドは「電離放射線の照射により物質1キログラム (kg) につき0.01ジュール (J) の仕事に相当するエネルギーが与えられるときの吸収線量」ということになる。
SI(MKS単位系)でもCGS単位系でも半端な係数が現れるのは、ネズミを殺すのに必要なX線の吸収線量として定義されたからである。1918年に S. Russ が定義した。しかし、実際にネズミを殺すには1 rad ではまったく足りない。
日常的に浴びる線量としては量が大きいため、ミリラド (mrad) やマイクロラド (µrad) がよく使われる。
計量法における位置付け
編集計量法では、放射能の計量単位である、キュリー、ラド、レントゲン、レムの4単位を現在でも法定計量単位として認めている。ただし、これらの単位は計量制度審議会の資料(2005年)において、「暫定的使用」する単位として位置づけられている[6]。
番号 | 物象の状態の量 | 計量単位(非SI単位) | SI単位 |
---|---|---|---|
64 | 放射能 | キュリー(Ci) | ベクレル(Bq) |
65 | 吸収線量 | ラド(rad) | グレイ(Gy) |
69 | 照射線量 | レントゲン(R) | クーロン毎キログラム(C/kg) |
71 | 線量当量 | レム(rem) | シーベルト(Sv) |
番号は計量法第2条第1項第1号における物象の状態の量の列挙順の番号である。
脚注
編集注釈
編集- ^ 本文を参照。
出典
編集- ^ 平凡社大百科事典(第15巻:ユエ-ワン)、p.399、「ラド」の項、執筆者は山下幹雄、1985-06-28初版、平凡社
- ^ NIST SP811 p.10, Chapter5.2, NIST
- ^ SI Brochure(1991) p.80, Table 10 note h
- ^ 計量単位令 別表第1、項番58、ラドの項、「グレイの百分の一」
- ^ 計量単位令 別表第1、項番58、グレイの項、「電離放射線の照射により物質一キログラムにつき一ジュールの仕事に相当するエネルギーが与えられるときの吸収線量」
- ^ 単位について p.20、(参考)法定計量単位とSI(国際単位系 )との関係 一覧表 項番57,58,62,63,64,65、2005年度第1回 計量行政審議会 開催資料 資料4(12)、経済産業省 計量行政審議会、2005-07-26
関連項目
編集量 | 単位 | 記号 | 定義 | 導入年 | SI単位 |
---|---|---|---|---|---|
放射能 (A) | キュリー | Ci | 3.7×1010 s−1 | 1953年 | 3.7×1010 Bq |
ベクレル | Bq | s−1 | 1974年 | SI単位 | |
ラザフォード | Rd | 106 s−1 | 1946年 | MBq | |
照射線量 (X) | レントゲン | R | esu / 0.001293 g(空気) | 1928年 | 2.58×10−4 C/kg |
フルエンス (Φ) | 毎平方メートル | m−2 | m−2 | 1962年 | SI単位 |
吸収線量 (D) | エルグ | erg | erg⋅g−1 | 1950年 | 10−4 Gy |
ラド | rad | 100 erg·g−1 | 1953年 | 10−2 Gy | |
グレイ | Gy | J·kg−1 | 1974年 | SI単位 | |
等価線量 (H) | レム | rem | 100 erg·g−1 | 1971年 | 10−2 Sv |
シーベルト | Sv | J·kg−1 × WR | 1977年 | SI単位 |