円山川
円山川(まるやまがわ)は、兵庫県の北東部を流れる一級水系の本流。朝来川(あさごがわ)とも呼ばれる。2012年(平成24年)7月3日、「円山川下流域・周辺水田」がラムサール条約に登録された[1][2]。
円山川 | |
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六方川合流点より下流方面を望む | |
水系 | 一級水系 円山川 |
種別 | 一級河川 |
延長 | 68 km |
平均流量 |
30.2 m3/s (府市場観測所 2002年) |
流域面積 | 1,300 km2 |
水源 | 兵庫県朝来市生野町円山 |
水源の標高 | 641.1 m |
河口・合流先 | 日本海(兵庫県豊岡市) |
流域 | 日本 兵庫県 |
地理
編集兵庫県の中部、旧播磨国の境界近く朝来市生野町円山(標高641.1m)に源を発して北流。途中養父市、豊岡市を流れ、豊岡市北部で日本海に注ぐ。長さは68kmで兵庫県で5番目、流域面積は1300km2で兵庫県で2番目[4]。
下流域の豊岡盆地は旧但馬国では最大の平地で、穀倉地帯となっている。豊岡盆地の下流部は非常に流れが緩やかで(1万分の1程度の勾配[4])、河口から17kmの出石川合流付近まで海水が浸入する。そのため、この付近までは鏡のような水面が続き、河原が見られるのはそれより上流となる[4]。18kmには丸石河原がある。
豊岡市内では堤防内の高水域がほぼ民有地で占められており、牧草地や畑となっている。また多くの高水域において柳の木(コリヤナギ)が植えられており、柳行李(やなぎごうり)作りの原料となっている。
治水
編集円山川では1922年(大正11)から1936年(昭和11)にかけて、当時の豊岡町が進めた大豊岡構想のもと、河川改修工事が行われた。工事費用は国費が2/3、県費が1/3であり、工事には周辺の農民が人夫として出役し、昭和恐慌に前後する時代にあって結果的に地域経済を潤すこととなった。[5][6]
2004年(平成16年)の台風23号では10月20日、堤防が決壊した。死者7人、重傷者23人を出し、住宅8229棟が被害を受けた[7]。
この被害を受けて円山川の河道を掘り下げることになった。豊岡市は、当時日本では飼育個体しかいなくなっていたコウノトリの野生復帰を目指しており、その要請を受けた国土交通省はコウノトリが餌をとれる程度の浅さにするよう薄く広く掘った[7]。堤防はコンクリートブロックで造りつつ、上に土をかぶせて草の繁茂を許した[7]。
2007年(平成19年)には河口から5.5kmほどの中州である簸磯島(ひのそじま)が、治水事業で面積の半分、体積の三分の二が掘削され、全島が湿地もしくは半湿地状態となった。これは事前調査でシッチコモリグモ・ヤナギヌカボ・タコノアシ・ミクリなどの重要な動植物が発見されたのを受けて、全島削除が半島削除に変更されたため[4]。
生物相
編集円山川に生息している生物の種類は多く、近畿地方にある11の一級河川の中でも最も生物相の豊かな河川であるといっても過言ではない[4]。
分類群 | 種数 | 順位 |
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維管束植物 | 806 | 1 |
昆虫類 | 1537 | 3 |
魚類 | 87 | 3 |
鳥類 | 100 | 5 |
鳥類
編集コウノトリ・コハクチョウ・マガン・オオタカ・ノスリ・ハヤブサ・コミミズク・ノゴマ・コムクドリなど。
2005年にコウノトリが放鳥され、円山川全域が狩猟禁止となった。それ以前は、島根県の中海・宍道湖で越冬するコハクチョウ・マガンが通過して行くだけであった。冬に田んぼに水を張る冬季湛田でコハクチョウが越冬するようになり、続いてマガンも越冬するようになった[8]。ヤナギ林・ヨシ原は、鳥類標識調査により渡り鳥の重要な中継地であることが知られており、ツバメの塒としても有名[4]。
両生類
編集魚類
編集簸磯島ではシラウオの産卵が確認されている[4]。ニホンウナギ、キタノメダカ、アユカケ、ドジョウなども見られる[2]。
鞘翅目
編集オオフタホシマグソコガネ・カドマルエンマコガネ・ダイコクコガネ
- ミミズなどの小動物の死骸を食べ、河川敷で見られる。
- 丸石河原では、本種をはじめ、大型種から微小種まで様々なゴミムシ類が見られる。
アイヌハンミョウ・コニワハンミョウ・ハンミョウ・エリザハンミョウ・マメハンミョウ
- アイヌハンミョウは丸石河原に多く、中流域に多く生息。コニワハンミョウは、狭い砂地や土のあるところに生息し、中流域から海岸部まで生息。ハンミョウ類は河原などが草地になると生息できなくなるため、適当なかく乱が必要。マメハンミョウの幼虫はイナゴの卵を食べるため多く見られる。
- 河畔林の林床に生息。
ヤナギハムシ・ヤナギルリハムシ・クルミハムシ・バライロツツハムシ・クロボシツツハムシ・コガタルリハムシ・ヨモギハムシ・アオバネサルハムシ・スキバジンガサハムシ
- ヤナギハムシとヤナギルリハムシはヤナギ類に見られ、葉を食べつくすほど大発生することもある。クルミハムシはオニグルミ、バライロツツハムシ・クロボシツツハムシはノイバラ、コガタルリハムシはギシギシ、ヨモギハムシ・アオバネサルハムシはヨモギ、スキバジンガサハムシはヒルガオ類で見られる。
テントウムシ・ナナホシテントウ・ヒメカメノコテントウ・カメノコテントウ・ハラグロオオテントウ・マクガタテントウ
- アブラムシ食べに集まる。マクガタテントウは小さな河川敷特有の種で、円山川には多い。
膜翅目
編集ミツバチ・ニッポンヒゲナガハナバチ・クロアナバチ・アシナガバチ
鱗翅目
編集キアゲハ・ヒメウラナミジャノメ・ベニシジミ・モンシロチョウ・スジグロチョウ・キチョウ・モンキチョウ・キタテハ・コムラサキ・ゴマダラチョウ
直翅目
編集トノサマバッタ・クルマバッタモドキ・マダラバッタ・コバネイナゴ
トンボ目
編集オオカワトンボ・ハグロトンボ・アオハダトンボ・オナガサナエ・キイロヤマトンボ・ホンサナエ・ヤゴヤサナエ・チョウトンボ・コフキトンボ・ネアカヨシヤンマ・アオヤンマ・マルタンヤンマ・ヤブヤンマ・ヒヌマイトトンボ
植物
編集汽水域の菊屋島には近畿地方、日本海側では最大規模のヨシ原がある。護岸には多くのシオクグが生育している。京都府ではすでに絶滅しているので、近畿地方の日本海側では唯一の生育地となっている。簸磯島ではヒメシロアサザやウスゲチョウジタデが発見されている。隣接する戸島湿地にはコウキヤガラ・ミズアオイ・ヒメシロアサザの群落が見られる。河口から7kmから9kmにかけては、ヤナギ林を含む大規模なヨシ原が見られる。丸石河原には、カワラナデシコ・カワラヨモギ・カワラハハコ・カワラマツバなどが見られる。洪水の後などにはカワラハハコが大群落を作ることがある。カワラサイコは、標本が採集されているが、現在は生育が確認されていない。外来種のシナダレスズメガヤやアレチハナガサなどの比率が高くなってきている[4]。
流域の自治体
編集主な支流
編集括弧内は流域の自治体
並行・横断する交通
編集並行する鉄道
編集横断する鉄道
編集道路
編集その他
編集流域の観光地
編集イメージキャラクター
編集豊岡河川国道事務所では、「ぷるるん」と名づけられた円山川の精霊のキャラクターを子供向けの河川PR事業に利用している。
脚注
編集- ^ ラムサール条約に登録、豊岡市・円山川下流域 県内初:神戸新聞2012年7月3日
- ^ a b c “Lower Maruyama River and the Surrounding Rice Paddies | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2018年10月17日). 2023年4月14日閲覧。
- ^ “円山川の歴史|まるやまがわキッズ”. www.kkr.mlit.go.jp. 2019年9月7日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 菅村定昌、兵庫県生物学会編、「近畿有数の生物相を誇る円山川」『兵庫県生物学会65周年記念誌 豊かな兵庫の自然力 - 生物の多様性と人々の営み -』、神戸新聞総合出版センター、2011年、14-16頁
- ^ 豊岡市史編集委員会『豊岡市史』下巻、p.331-336、1987年。
- ^ 一連の改修にかかる計画図・竣工図等の一部は、豊岡市立図書館「郷土資料デジタルライブラリィ」(2018年7月15日閲覧)でダウンロードできる。
- ^ a b c 「温泉・カニでにぎわう街の元市長が語る「コウノトリと共生する防災」」、『毎日新聞』2022年4月3日ウェブ版。
- ^ 高橋信、兵庫県生物学会編、「円山川が育む野鳥の多様性」『兵庫県生物学会65周年記念誌 豊かな兵庫の自然力 - 生物の多様性と人々の営み -』、神戸新聞総合出版センター、2011年、20-21頁
- ^ 上田尚志、兵庫県生物学会編、「円山川河川敷で暮らす虫」『兵庫県生物学会65周年記念誌 豊かな兵庫の自然力 - 生物の多様性と人々の営み -』、神戸新聞総合出版センター、2011年、17-19頁