原形質流動
原形質流動(げんけいしつりゅうどう)または細胞質流動(さいぼうしつりゅうどう)とは、生きている細胞の内部で、原形質が流れるように動く現象である。 狭義には植物細胞で見られるような細胞の外形が変わらない運動だけを意味するが、広義にはアメーバ運動のような細胞全体の運動も含む。
原形質流動は細胞内小器官に様々な生体分子を細胞内で輸送するための細胞運動である。 ATPをエネルギー源とし、細胞骨格を形成しているマイクロ(アクチン)フィラメントとモータータンパク質(ミオシンなど)との相互作用によって流動力が生じる。 これは動物の筋肉の収縮運動と発生機構的には極めてよく似ている。
原形質流動の様式
編集細胞の種類により様々な様式が見られる。
研究の歴史
編集1772年、イタリアのボナヴェントゥラ・コルティ (Bonaventura Corti) が、顕微鏡を使った観察で、シャジクモの細胞内容が循環運動していることを論文で発表したが、あまり注目されなかった。 1807年、ドイツの植物学者ルドルフ・トレヴィラーヌス (Ludolph Christian Treviranus) がこの現象を再発見したが、細胞内の熱の不等分布による、対流のような現象と考えた。
この現象の発生機構が明らかになってきたのは、20世紀中頃に入ってからで、神谷宣郎らのシャジクモや粘菌を用いた研究によるものである。 神谷らは1956年、原形質流動は原形質のゾル=ゲル界面での能動的な「すべり」によって発生する、とする滑り説を提唱した。
流動力はアクチンとミオシンの相互作用によるものと仮定されていたが、1974年にシャジクモ類からアクチンフィラメントが、1994年には車軸藻からミオシンが同定され、その機構が立証された。