木綿ゆうとは、こうぞのことであり、それを原料とした布のことである[1]。楮の木の皮を剥いで蒸した後に、水にさらして白色にした繊維である。

伊勢神宮の神事などを原料として単に木綿ゆうと記される[1][2][3]神宮式年遷宮や他の神社でも遷座では頭に巻いたり、たすき掛けにして用いられる[1]真麻木綿まそゆうとも。

利用

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古代、日本に木綿もめんが伝わらなかった時代には、を主としつつも、様々な植物が糸・布の原料として利用された。楮もその一つで、そこからとった「ゆう」(旧仮名遣いで「ゆふ」)が「木綿」と書かれた[4]。これを織って作った布は太布たふたえ/たく栲布たくぬのなどと呼ばれる。ただし、太布は藤蔓ふじつるからとった布も含む[5]。また、木綿ゆうから作られた造花木綿花ゆうはなと言う。

 
写真は伊勢神宮・内宮、皇大神宮における神御衣祭かんみそさいにて。木綿鬘ゆうかずらを頭に巻いた神職。

神道においては木綿ゆう神事に用いる。幣帛としてに捧げるほか、紙垂にしてに付けた木綿垂ゆうしでに懸けた木綿鬘ゆうかずら、袖をかかげるに使用した木綿襷ゆうだすきである[1]

木綿鬘は、厳重な斎戒の表象であり、実際には麻を用いて頭に直接巻き、神宮式年遷宮にて、また他の神社でも遷座の際に用いる[1]。木綿襷は、同じく遷宮・遷座の際にかけ、ここでも実際には麻を使い、宮司が左右の肩から斜めに両脇にかけ、それ以下の者は左肩から右脇にかける[1]。伊勢神宮の神事においては、木綿鬘や木綿襷、大麻おおぬさには木綿ゆうととあるが麻を用い[1][2]玉串[3]や大麻[2]苧を木綿ゆうと呼ぶ。木綿襷は、最も古い事例では允恭天皇4年(いんぎょうてんのう、5世紀)の9月に盟神探湯くがたちを行った際に各人がつけた[1]

出典

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参考文献

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  • 國學院大學日本文化研究所 編『神道事典』(縮刷)國學院大學日本文化研究所、1999年。ISBN 4-335-16033-XISBN 978-4-335-16033-2 
  • 三好和義; 岡野弘彦『伊勢神宮』淡交社〈日本の古社〉、2003年。ISBN 4-473-03108-XISBN 978-4-473-03108-2 
  • 永原慶二『新・木綿以前のこと』中央公論社〈中公新書〉、1990年。ISBN 4-12-100963-0ISBN 978-4-12-100963-0 
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