松浦の万葉
松浦の万葉(まつらのまんよう)は日本最古の歌集万葉集の和歌約4500首のうち唐津・東松浦に関係する30首のことである。主に玉島川の歌や佐用姫を偲んだ歌が主体[1]。726年(神亀3年)に山上憶良が筑前国守、728年(神亀5年)に大伴旅人が太宰帥に任命されたことが大きく影響している[2]。
玉島川に関する歌
編集- 漁する海人の児どもと人はいへど見るに知らえぬ良人の子と
- (大伴旅人 巻5・853)
- 玉島のこの川上に家はあれど君を恥しみ顕さずありき
- (大伴旅人 巻5・854)
- 松浦川川の瀬光り鮎釣ると立たせる妹が裳の裾濡れぬ
- (大伴旅人 巻5・855)
- 松浦なる玉島川に鮎釣ると立たせる子らが家路知らずも
- (大伴旅人 巻5・856)
- 遠つ人松浦の川に若あゆ釣る妹が手本をわれこそ巻かめ
- (大伴旅人 巻5・857)
- 若鮎釣る松浦の川の川波の並にし思はばわれ恋ひめやも
- (大伴旅人 巻5・858)
- 春されば吾家の里の川門には鮎児さ走る君待ちがてに
- (大伴旅人 巻5・859)
- 松浦川七瀬の淀はよどむともわれはよどまず君をし待たむ
- (大伴旅人 巻5・860)
- 松浦川川の瀬早み紅の裳の裾濡れて鮎か釣るらむ
- (大伴旅人 巻5・861)
- 人皆の見らむ松浦の玉島を見ずてやわれは恋ひつつ居らむ
- (大伴旅人 巻5・862)
- 松浦川玉島の浦に若鮎釣る妹らを見らむ人の羨しさ
- (大伴旅人 巻5・863)
- 君を待つ松浦の浦の娘女らは、常世の国の天娘女かも
- (吉田宣 巻5・865)
- 帯日売神の命の魚釣らすと、御立たしせりし石を誰見き
- (山上憶良 巻5・869)
- 百日しも行かぬ松浦路今日行きて、明日は来なむを何か障れる
- (山上憶良 巻5・870)
鏡山に関する歌
編集鏡山(佐用姫(佐用比売)伝説)に関する歌。
神集島に関する歌
編集- 帰り来て見むと思ひしわが屋外の秋萩薄散りにけむかも
- (秦田麿 巻15・3681)
- 天地の神を祈ひつつ吾待たむ早来ませ君待たば苦しも
- (娘子 巻15・3682)
- 君を思い吾が恋ひまくはあらたまの立つ月毎に避くる日もあらじ
- (遣新羅使 巻15・3683)
- 秋の夜を長みにかあらむ何そここば眠の寝らえぬも独り寝ればか
- (遣新羅使 巻15・3684)
- 足姫御船泊けてけむ松浦の海妹が待つべき月は経につつ
- (遣新羅使 巻15・3685)
- 旅なれば思ひ絶えてもありつれど家にある妹し思ひがなしも
- (遣新羅使 巻15・3686)
- あしひきの山飛び越ゆる雁がねは都に行かば妹に逢ひて来ね
- (遣新羅使 巻15・3687)
松浦舟に関する歌
編集松浦舟に関する歌。
- さ夜深けて堀江漕ぐなる松浦船楫の音高し水脈早みかも
- (作者不詳 巻7・1143)
- 松浦舟さわく堀江の水脈早み楫取る間なく思ほゆるかも
- (作者不詳 巻12・3173)
脚注
編集- 引用
- ^ “万葉集にみる松浦佐用姫”. 唐津市. 2019年11月21日閲覧。
- ^ “万葉集と松浦地方”. 唐津市. 2019年11月21日閲覧。
- 参考文献
- 唐津市文化復興財団『松浦の万葉』。