池田の猪買い
池田の猪買い(いけだのししかい)は上方落語の演目で、北の旅噺の一つ。初代露の五郎兵衛作「露休置土産 巻四」(1707)の「野猪の蘇生」が原話。初代桂春團治、二代目三遊亭百生、三代目桂米朝、二代目桂枝雀、二代目桂ざこば、三代目笑福亭仁鶴、桂文珍など多くの演者がいる。
あらすじ
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ある日、冷え気(淋病のこと)に悩む男が、丼池(どぶいけ)の甚兵衛に相談に来る。「それなら猪(しし)の肉がええ。しかし取れたての肉でないといけない。心安うしていて大阪でも知られている猪撃ちの名人、池田の狩人・六太夫とこ行っといで、紹介状書いてやるさかい」と、親切に行く道まで教えてもらう。しかし、男は、物覚えが悪く、行く先々で道を尋ね、産婆を迎えに行った男や農民を閉口させながらも、どうにか池田まで辿り着く。
狩人六太夫の家を訪ねた男は、一昨日仕留めたばかりという猪肉を勧められるが、「素人では一昨日の猪か一昨年の猪か分からないので、目の前で猪を撃って欲しい」と頼み込む。六太夫は渋ったが、男の「雪がちらちらする、今日のような日は猟が立つ」とのせりふに折れ、猟犬と男を連れて山に行く。犬が追い立てたつがいの猪を発見し、狙いを定める六太夫に男は横から、「わあ、さぞ猪の肉うまいやろなあ」「オスとメスどちらがうまいか」「帰ったら食わせて」「米炊いてんか」「酒あるか」などと、くだらないことを質問する。しまいには狙い通り撃って倒した猪を、「この猪は新しいか」と聞く始末。頭に来た六太夫、猪を鉄砲の台尻でぶったたく。猪は、鉄砲の音と至近弾で目を廻していただけであったため、そのはずみで目を覚まして逃げていく。「どうじゃ、客人。あの通り新しい」
概略
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- 三部形式で、男と甚兵衛の頓珍漢な会話からなる第一部。男が道を尋ねて通行人を困らせる第二部。六太夫と男との猪狩りからサゲになる第三部である。それぞれとも笑いが多く人気のある演目となっている。男が池田に来て寒風に震える個所では「はめもの」が使われ効果をあげている。
- 手ぬぐいを鉄砲に見立てるという、比較的珍しい所作が見られる噺である。
- 現在、大阪府池田市は、20世紀初頭の阪急電鉄宝塚線開通後宅地化が進み、住宅密集エリアでは猪は出なくなったが、現在も五月山公園内など緑地エリアでは掘り返し跡や糞などにより猪の生息を確認することができ、狩人六太夫らの後継団体として、摂猟会が現在も狩猟活動を続けている。山間部の伏尾温泉や隣接する兵庫県川西市、同じく宝塚市の武田尾温泉では猪の肉を用いたボタン鍋が食べられる。