猪豚亜目
猪豚亜目(ちょとんあもく・学名 Suina)は鯨偶蹄目(偶蹄目)に属する哺乳類の一群。現存するイノシシ科・ペッカリー科の2科を中心に構成される。別名猪型亜目(いのししがたあもく・学名 Suiformes[4])イノシシ亜目[5]。
猪豚亜目 | ||||||||||||||||||||||||
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地質時代 | ||||||||||||||||||||||||
約4,800万年前 (新生代古第三紀始新世前後期) - 第四紀完新世(現世) | ||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Suina Gray, 1868[1] | ||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
猪豚亜目[3] | ||||||||||||||||||||||||
上科・科(†は絶滅) | ||||||||||||||||||||||||
形態
編集外見は全体的にイノシシに似ている[6][7][8]。基本的に大臼歯はブノドントで、雑食性に適応している[6][9]。現生群では犬歯が非常に発達し、大きな牙になっている[6][7][8][9]。また、哺乳類の基本の歯の数をそろえている[6]。現世の猪豚亜目は胃は3室ないし、1室だけ持っている[6]。また、鼻骨が発達し、吻が長くなっていて、そこに神経が集中し嗅覚が非常に発達している[6]。四肢は短い[9]。指趾は各4本あるが、現生群では2本(第3指・第4指)が機能的であり、もう2本は退化傾向にある[9][10]。
分布
編集漸新世にペッカリー科が北アメリカ大陸に出現し、同時期にヨーロッパにイノシシ科が出現した[6][8]。鮮新世後期にパナマ陸橋ができ、ペッカリー科が南アメリカ大陸へ進出した[8]。中新世後期にはイノシシ科がアフリカやアジアに分布を広げた[7]。かつてペッカリー科は旧大陸にも分布したと考えられていたが、のちの研究により旧大陸の化石種はいずれもイノシシ科または所属科不明とみなされている[8]。
系統関係
編集以前は核脚亜目や反芻亜目よりも祖先型とされたグループが猪型亜目Suiformesとしてまとめられており、猪型亜目のうち原始的な絶滅群をパレオドゥス亜目Palaeodontaとして分ける説もあった[9]。猪豚類はイノシシ下目Suinaとされ、外見的に似ており反芻をしないカバ下目Ancodonta(現生のカバ類と化石のアントラコテリウム類を含む[2])などとともに猪型亜目の下位に置かれていた[5][9]。しかし、分子系統学によるDNA解析の結果、カバ類は猪豚類とは比較的縁遠く、その姉妹群は鯨類であり、さらに、カバ類およびクジラ類の姉妹群は反芻亜目であることが明らかとなった(これらはCetruminantiaとして総括される)[11][12]。Cetruminantia類を猪豚類の姉妹群とする説もあり、このクレードにはArtiofabulaという学名が与えられている[12]。絶滅したエンテロドン科などからなるエンテロドン上科Entelodontoideaもイノシシ下目に含まれると考えられていたが[13][14][15]、2000年代以降の研究からエンテロドン科はCetruminantia類に属することが明らかになってきている[16][17]。イノシシ上科は猪豚類に含まれることが確実な系統であり、現生のイノシシ科・ペッカリー科のほかに絶滅したSanitheriidae科などで構成される[2][18]。
有蹄類 Unglate |
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分類
編集以下の現生2科と絶滅1科(†で示す)が分類され、そのほかにEgatochoerus・Odoichoerus・Siamochoerus・Huaxiachoerusなどの所属科不明の絶滅属が含まれる[18]。
脚注
編集- ^ Stephen Jackson and Colin Groves, “Suborder Suina,” Taxonomy of Australian Mammals, CSIRO Publishing, 2015, Page 307.
- ^ a b c John M. Harris, “Suborder Suiformes,” In: Jonathan Kingdon and Michael Hoffmann (eds.), Mammals of Africa, Volume VI: Hippopotamuses, Pigs, Deer, Giraffe and Bovids, Bloomsbury Publishing, 2013, Page 24.
- ^ 遠藤秀紀・佐々木基樹「哺乳類分類における高次群の和名について」『日本野生動物医学会誌』第6巻 2号、日本野生動物医学会、2001年、45-53頁。
- ^ 日本哺乳類学会 種名・標本検討委員会 目名問題検討作業部会「哺乳類の高次分類群および分類階級の日本語名称の提案について」『哺乳類科学』第43巻 2号、日本哺乳類学会、2003年、127-134頁。
- ^ a b 三浦慎悟「有蹄類にみられる順位と社会構造」『哺乳類科学』第27巻 1・2号、日本哺乳類学会、1987年、5-26頁。
- ^ a b c d e f g エドウィン・H・コルバート、マイケル・モラレス、イーライ・C・ミンコフ 著、田隅本生 訳『脊椎動物の進化 原著第5版』築地書館、420,421頁。
- ^ a b c 『新版 絶滅哺乳類図鑑』丸善、194頁。
- ^ a b c d e 冨田幸光『新版 絶滅哺乳類図鑑』伊藤丙雄・岡本泰子 イラスト、丸善、191頁。
- ^ a b c d e f 大泰司紀之「偶蹄目の進化」『哺乳類科学』第10巻 2号、日本哺乳類学会、1970年、155-168頁。
- ^ 遠藤秀紀「正獣類の多様化(21)遅れてきた勝者」『哺乳類の進化』東京大学出版会、2002年、99-103頁。
- ^ Claudine Montgelard, François M. Catzeflis, and Emmanuel Douzery, “Phylogenetic relationships of artiodactyls and cetaceans as deduced from the comparison of cytochrome b and 12S rRNA mitochondrial sequences,” Molecular Biology and Evolution, Volume 14, Issue 5, Society for Molecular Biology and Evolution, 1997, Pages 550–559.
- ^ a b Peter J. Waddell, Norihiro Okada, and Masami Hasegawa, “Towards Resolving the Interordinal Relationships of Placental Mammals,” Systematic Biology, Volume 48, Issue 1, Society of Systematic Biologists, 1999, Pages 1–5.
- ^ Joeckel, R. M. (1990). "A Functional Interpretation of the Masticatory System and Paleoecology of Entelodonts". Paleobiology. 16 (4): 459–482. doi:10.1017/S0094837300010198. JSTOR 2400970.
- ^ Foss, Scott E. (2001). Systematics and Paleobiology of the Entelodontidae (Mammalia, Artiodactyla). DeKalb, Illinois: Ph.D Dissertation. Department of Biological Sciences, Northern Illinois University
- ^ Foss, Scott E. (2007). "Family Entelodontidae". In Prothero, Donald R.; Foss, Scott E. (eds.). The Evolution of Artiodactyls. Baltimore: Johns Hopkins University Press. pp. 120–129. ISBN 9780801887352。
- ^ O'Leary, Maureen A.; Gatesy, John (2008). “Impact of increased character sampling on the phylogeny of Cetartiodactyla (Mammalia): combined analysis including fossils” (英語). Cladistics 24 (4): 397–442. doi:10.1111/j.1096-0031.2007.00187.x. ISSN 1096-0031 .
- ^ Spaulding, Michelle; O'Leary, Maureen A.; Gatesy, John (2009). “Relationships of Cetacea (Artiodactyla) among mammals: increased taxon sampling alters interpretations of key fossils and character evolution”. PLOS ONE 4 (9): e7062. Bibcode: 2009PLoSO...4.7062S. doi:10.1371/journal.pone.0007062. PMC 2740860. PMID 19774069 .
- ^ a b John M. Harris & Liu Li-Ping, “Superfamily Suoidea,” In: Donald R. Prothero & Scott E. Foss (eds.), The Evolution of Artiodactyls, Johns Hopkins University Press, 2007, Pages 130–150.