地軸

今現在地軸は移動している。
自転軸から転送)

地軸(ちじく)とは、地球自転する際の軸(自転軸)であり、北極点南極点とを結ぶ運動しない直線を指す。地球以外の惑星及び衛星についてもそれぞれの自転の軸を地軸と呼ぶ。 以降、特に断らない限り本項では、地球の自転軸について述べる。

地球の自転とその地軸を視覚化したアニメーション

地球の自転軸は、公転[1]に対して約23.4度傾いており[2]、公転面に対する角度は約66.5度である[3]

地軸の傾き

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地球の自転軸の傾き
公転面に直交する破線(公転面に対する法線ベクトル)に対して自転軸(実線)は約23.4度傾いている。公転面(Ecliptic)と赤道面(Celectial Equator)も同様。

地球は太陽の周りを回る公転の他に、自らが公転軌道上で独楽の如く回転する自転運動をしている。この二つの回転運動はそれぞれの公転面(黄道面)と自転面(赤道面)もしくは公転軸と自転軸との関わりで捉えられる。自転軸が公転軸と平行であれば公転面と赤道面が同一面となり、地軸(地球の自転軸)は公転面に対して垂直(90度)である。地球の場合は自転軸は公転軸より約23.4度傾いており、地軸と公転面の角度は約66.5度となっている。

地軸と季節の変化

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地軸の傾きが日常生活に最も関連するのは季節の移り変わりだろう[疑問点]。地軸が傾いていることから、例として北半球では夏季に日が高く昇り、昼の時間が長く、冬季には日が低く、昼が短い。単位面積当たりの太陽エネルギーの照射量と日照時間とが変化することで、季節が生じる。北緯23.43度(23度26分)を走る北回帰線上では、1年に1度、夏至に太陽の南中高度が90度になる。また北極圏では、夏至に近い時期はに太陽が常に沈まず(白夜)、冬至の頃には日が昇らない(極夜)。南極圏ではそれぞれ時期が6か月異なる。

地軸と北極星

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地軸は、公転の影響を受けないため、常に一定の方向を指す。そのため、天球北半球と地軸の交点付近の恒星である北極星は、1日のどの時刻であっても、1年のどの季節であっても同じ高度(角度)に見える。この高度は観測者の居る地点の緯度によってだけ決まるので、北極星の高度を測定すれば(もちろん北極星の見える北半球においてであるが)、地球上のどの地点であっても緯度を計算できるのである。GPSなどが発達する以前、数百年にわたって北極星が航海などに役立ってきたのは、こうした地軸の性質による。

ただし、非常に長い期間を想定した場合、地軸自体の指す方向は変化する。これを歳差運動と呼ぶ。歳差運動自体は珍しいものではなく、コマの首振り運動のように日常観察できるものである。地軸の歳差運動の周期は約2万5,800年である。このため、北極星に該当する恒星も相対的に変化しているように観察される。

地軸の傾きを計算する方法

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地軸が傾いていること自体は、季節によって日の出、日の入りの時刻が異なることから予想することができた。それでは、地軸の傾き自体はどのように測定できるのだろうか。まず、北極星の高度から緯度 x を測定する。北極星が観測者の真上に見えれば緯度90度、水平線であれば緯度0度である。次に、一日で最も日が短くなる北半球の冬至の南中時に高さ h の物体の影の長さ l を測定する。すると、次の式から太陽の高度 θ が分かる。

 

北半球であれば、地軸の傾き φ は、

φ = 90 - x - θ

である。

他の惑星の地軸

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地軸の傾きの比較、左から[2]
地球(約23度)、天王星(約97度)、金星(約177度)

太陽系の惑星においては、地軸の傾き(赤道傾斜角)はさまざまである。 太陽系において地軸の傾きの絶対値が最も大きい惑星は天王星(97.86度)であり、最も小さい惑星は水星(0.01度)となる。

太陽系惑星軌道傾斜角および自転軸傾斜角[4][5]
分類 天体名 公転軌道面の傾き 公転周期
(年)
自転軸(赤道)
傾斜角[6][7]
自転周期
(日)
軌道傾斜角[8] 対太陽の赤道 不変面[9]
地球型
岩石惑星
水星 7.01° 3.38° 6.34° 0.241 0.01° 58.7
金星 3.39° 3.86° 2.19° 0.615 177°[10] 243[11]
地球 0° 基準面 7.16° 1.57° 1.00 23.4° 0.997
火星 1.85° 5.65° 1.67° 1.88 25.2° 1.03
木星型
天王星型
木星 1.31° 6.09° 0.32° 11.9 3.12° 0.414
土星 2.49° 5.51° 0.93° 29.5 26.7° 0.426
天王星 0.77° 6.48° 1.02° 84.0 97.8°[12] 0.718[11]
海王星 1.77° 6.43° 0.72° 165 28.3° 0.671
準惑星
小惑星
冥王星 17.1° 11.9° 15.6° 248 120°[13][14] 6.39[11]
ケレス 10.6° 9.20° 4.60 0.378
パラス 35.1° 34.4° 4.62 84°±5° 0.326
ベスタ 7.14° 5.56° 3.63 0.223
衛星[15][16] 5.15°[17] 27.3日 6.69°[18][19] =公転
ガニメデ 0.195° 7.16日 0-0.33° =公転
カリスト 0.281° 16.7日 =公転
タイタン 0.306° 15.9日 1.94° =公転
恒星 太陽 該当せず[20] 7.25°[21][22] 27.3[23]


また、赤道傾斜角を正確に観測するには詳細なデータが必要であるため、太陽系外惑星において正確に観測された事例は無い。 ガス惑星においては、光学観測によって惑星表面の動きから計算される軸と、コアの回転軸が異なるケースもある。

地震による地軸への影響

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超巨大地震による地形の変形により極運動が励起され、地軸がずれることが知られる[24]。地軸がずれた結果、地震の前後で地球の自転周期がわずかに変化し、2004年スマトラ沖地震、2010年チリ・マウレ地震、2011年東北地方太平洋沖地震では、いずれもマイクロ秒オーダー(10-6s)で自転周期が速くなったという観測結果もある[25][26]

脚注

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  1. ^ 公転軸は公転面に対する法線ベクトルと同じく公転面に対して垂直である。
  2. ^ a b 国立科学博物館 「天王星は横倒しにまわっているって本当ですか?」
  3. ^ 日本大百科全書 (ニッポニカ)『地軸』 - コトバンク
  4. ^ 21世紀初頭における数値
  5. ^ なるべく数値を有効数字3桁に揃える。
  6. ^ IAU, 0 January 2010, 0h TT, Astronomical Almanac 2010, pp. B52, C3, D2, E3, E55
  7. ^ 回転の方向を考慮した数値。
  8. ^ 地球の公転面(黄道面)が基準
  9. ^ "en:Invariable_plane" - すべての惑星の軌道を加重平均した仮想面
  10. ^ 180°-177.36°=2.64°(正味)
  11. ^ a b c 逆向
  12. ^ 180°-97.8°=82.23°(正味)
  13. ^ 180°-119.59°=60.41°(正味)
  14. ^ CNN.co.jp 「冥王星、自転軸の傾きと揺らぎで地表の環境が激変 観測結果」 冥王星の自転軸の傾きは数百万年の間に約20度の幅で変動している。
  15. ^ Planetary Satellite Mean Orbital Parameters”. Jet Propulsion Laboratory, California Institute of Technology. 2019年1月28日閲覧。
  16. ^ 衛星の公転軌道の傾斜は対「ラプラス面英語版」の値。例外は月の対黄道面。
  17. ^ 地球の赤道面に対しては18.29°から28.58°
  18. ^ 対月の公転面。対黄道面=1.54°、対地球の赤道面=24°
  19. ^ Lang, Kenneth R. (2011), The Cambridge Guide to the Solar System Archived 1 January 2016 at the Wayback Machine., 2nd ed., Cambridge University Press.
  20. ^ 太陽には公転という意味での主星は存在しないが、銀河面内で天の川銀河の中心である銀河核の周りを約2.2億年余り(銀河年)をかけて回っている。
  21. ^ 理科年表 平成22年版、国立天文台、丸善 「太陽、惑星および月定数表」、対黄道面。
  22. ^ 銀河面に対しては67.23°である(en:sunより)。
  23. ^ 赤道面で。緯度75度で31.8。
  24. ^ 小林裕太 (2012年2月9日). “最近の大地震およびプレート運動による極運動の励起”. 北海道大学・宇宙測地学研究室. 2018年9月16日閲覧。
  25. ^ “Japan Quake May Have Shortened Earth Days, Moved Axis”. NASA. (2011年3月14日). http://www.nasa.gov/topics/earth/features/earth-20100301.html 2018年9月16日閲覧。 
  26. ^ “Chilean Quake May Have Shortened Earth Days”. NASA. (2010年3月1日). https://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?release=2011-080 2018年9月16日閲覧。 

関連項目

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