法学民事法民法コンメンタール民法第4編 親族 (コンメンタール民法)

条文

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離婚の規定の準用)

第749条
第728条第1項第766条から第769条まで、第790条第1項ただし書並びに第819条第2項、第3項及び第5項から第7項までの規定は、婚姻の取消しについて準用する。

改正経緯

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2024年改正(2024年(令和6年)5月21日公布、施行日未定、公布より2年以内に施行する)にて以下のとおり改正。

(改正前)第819条第2項、第3項、第5項及び第6項の規定は、
(改正後)第819条第2項、第3項及び第5項から第7項までの規定は、

解説

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婚姻の取消しは、離婚と類似する。そのため、従来の身分関係の処理をする離婚の規定が準用されている。戦後民法制定時に、家制度の廃止、夫婦・父母同権の思想から離婚時の取り扱いが大きく変わったのに伴い新設された。

準用のあてはめ
  1. 姻族関係の終了(民法第728条第1項準用)
    姻族関係は、婚姻の取消しによって終了する。
  2. 子の監護に関する事項の定め等(民法第766条準用)
    1. 父母の婚姻が取消されたときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
    2. 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
    3. 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
    4. 前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。
  3. 復氏等(民法第767条準用)
    1. 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、婚姻の取消しによって婚姻前の氏に復する。
    2. 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、婚姻の取消しの日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、婚姻の取消しの際に称していた氏を称することができる。
  4. 財産分与(民法第768条準用)
    1. 婚姻の取消しをした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
    2. 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、婚姻の取消しの時から二年を経過したときは、この限りでない。
    3. 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
  5. 復氏の際の権利の承継(民法第769条準用)
    1. 婚姻によって氏を改めた夫又は妻が、第897条第1項の権利(系譜、祭具及び墳墓の所有権他祖先を祭祀する権利)を承継した後、婚姻の取消しをしたときは、当事者その他の利害関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。
    2. 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。
  6. 子の氏(民法第790条第1項ただし書準用)
    子の出生前に父母の婚姻が取消されたときは、婚姻の取消しの際における父母の氏を称する。
  7. 子の親権者(民法第819条準用)
    1. (第2項準用)婚姻の取消しの場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
    2. (第3項準用)子の出生前に父母の婚姻が取消された場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
    3. (第5項準用)前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
    4. (第6項準用)子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる
    5. (第7項準用)
      裁判所は、第2項又は前二項の裁判において、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。この場合において、次の各号のいずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならない。
      1. 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。
      2. 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(次項において「暴力等」という。)を受けるおそれの有無、第1項、第3項又は第4項の協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。

関連条文

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判例

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  1. 婚姻取消 (最高裁判決 昭和57年09月28日)民法第732条民法第744条
    重婚における後婚の離婚による解消と後婚の取消の訴えの許否
    重婚において、後婚が離婚によつて解消された場合には、特段の事情のない限り、後婚の取消を請求することは許されない。

参考

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明治民法において、本条には以下の規定があった。

  1. 家族ハ戸主ノ意ニ反シテ其居所ヲ定ムルコトヲ得ス
  2. 家族カ前項ノ規定ニ違反シテ戸主ノ指定シタル居所ニ在ラサル間ハ戸主ハ之ニ対シテ扶養ノ義務ヲ免ル
  3. 前項ノ場合ニ於テ戸主ハ相当ノ期間ヲ定メ其指定シタル場所ニ居所ヲ転スヘキ旨ヲ催告スルコトヲ得若シ家族カ其催告ニ応セサルトキハ戸主ハ之ヲ離籍スルコトヲ得但其家族カ未成年者ナルトキハ此限ニ在ラス

前条:
民法第748条
(婚姻の取消しの効力)
民法
第4編 親族

第2章 婚姻

第1節 婚姻の成立
次条:
民法第750条
(夫婦の氏)
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