アポイ岳
アポイ岳(アポイだけ)は、北海道様似郡様似町にある標高810.5 mの山である。日高山脈支稜線の西南端に位置し、一等三角点(点名「冬島」)が設置されている。
アポイ岳 | |
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様似町市街地とアポイ岳 | |
標高 | 810.5 m |
所在地 | 日本 北海道様似郡様似町 |
位置 | 北緯42度06分28秒 東経143度01分32秒 / 北緯42.10778度 東経143.02556度座標: 北緯42度06分28秒 東経143度01分32秒 / 北緯42.10778度 東経143.02556度 |
山系 | 日高山脈 |
アポイ岳 | |
プロジェクト 山 |
山が「幌満橄欖岩」と呼ばれるかんらん岩でできている特殊な岩体のため、標高の低さに比して森林が発達せず、蛇紋岩植物が生育する高山植物の宝庫となっている。1952年に高山植物帯が「アポイ岳高山植物群落」として国の特別天然記念物に指定された。1981年には日高山脈襟裳国定公園(現:日高山脈襟裳十勝国立公園)の特別保護区となった。「アポイ岳と高山植物群落」として日本の地質百選にも認定されているほか、花の百名山、新・花の百名山、北海道百名山にも選定されている。
植物・動物相
編集アポイ岳とその周辺は針広混交林で、冷温帯性のキタゴヨウと亜高山性のエゾアリマツの混生が見られるほか、高山植物やエゾナキウサギなどの分布が低い標高まで降下する一方、コゴメウツギやコナラなど数多くの温帯性植物の東限となるなど、北方系と温帯系の動植物が同居する奇妙な生態系をつくっており、生物多様性のホットスポットともなっている。特に、アポイ岳は810 mという低標高にもかかわらず約80種の高山植物が生育し、亜種・変種・品種を含む固有種は20種近くに及ぶなど、世界的に見てもきわめてまれなほど固有種が集中する地域である。この理由として、以下の点があげられる[1]。
- アポイ岳のかんらん岩から作られた土壌は、ニッケルやマグネシウムなどの植物の生育を阻害する成分が多く含まれている上、かんらん岩は削られにくく土壌の堆積に時間がかかり、その土壌も風雨で移動しやすいために薄く、乾燥しやすく、栄養にも乏しいため、極相であるはずの針葉樹林の成立を阻んでいること
- 積雪量が少ないうえ強風にさらされるため土壌の凍結融解が起きやすく、植物の根が傷つけられたり斜面地の土壌が不安定になるなどする上、海に近く、主に夏場に海霧におおわれるため気温が低下するという気象条件により環境が高山に似たものになっていること
- アポイ岳は一度も海面下になることがなく陸地であったため誕生当時の植物群を保護してきた上、氷期に陸続きとなった大陸から南下してきた北方系の植物は温暖な間氷期に高山やアポイ岳などに逃げ込むなどしてアポイ岳に残ったり隔離した植物が、かんらん岩の特殊な土壌に適応していく過程で独自の進化を遂げたこと
ヒダカソウなどの固有種の存在が知られていたが、1990年代に大規模な盗掘があり植物相に大きなダメージが生じている。このことから地元ボランティアが盗掘の防止を呼び掛けるキャンペーンを行うなど監視活動を行っている[2]。
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キンロバイ
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ハクサンシャジン
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エゾマツムシソウ
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イブキジャコウソウ
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ナガボノアカワレモコウ
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ウメバチソウ
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コハマギク
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ヒダカミセバヤ
山名の由来
編集地名の由来はアイヌ語の「アペオイ」(ape-o-i, 火・ある・ところ)とされるが、古くに語義が忘れられており、定かではない[3]。かつてシカの豊猟を願ってアポイ岳に祭壇を設け、火を焚いて儀式を執り行ったところ、その後シカが多く獲れるようになったという伝説がある[4]。
アポイ岳ジオパーク
編集アポイ岳を含む様似町域は、アポイ岳ジオパークに含まれる。2008年(平成20年)12月に日本ジオパークとして認定され、その後の2015年(平成27年)9月には世界ジオパークとしても認定された[5]。同年11月には世界ジオパークが国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の正式事業となった[6]。
近隣の山
編集脚注
編集- ^ “1. かんらん岩が育むアポイ岳の植物相”. アポイ岳ジオパーク. 2024年9月1日閲覧。
- ^ “高山植物、盗掘しないで アポイ岳保全対策協 登山口で啓発”. 北海道新聞 (2018年6月17日). 2018年6月18日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “アイヌ語地名リスト ア~イチ P1-10”. アイヌ語地名リスト. 北海道環境生活部アイヌ政策推進室 (2007年). 2017年10月20日閲覧。
- ^ “アポイ岳・ピンネシリ”. 日高振興局保健環境部環境生活課. 2024年9月1日閲覧。
- ^ “北海道のアポイ岳、世界ジオパークに認定 国内8カ所目”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2015年9月19日) 2015年9月19日閲覧。
- ^ 日本ジオパークネットワーク (2015年11月17日). “世界ジオパークのユネスコ正式事業化にかかる記者発表”. 2017年9月14日閲覧。
- ^ “アポイ岳、学ぶ入り口 北海道・ジオパークセンター”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2013年4月14日). オリジナルの2013年4月14日時点におけるアーカイブ。 2017年9月14日閲覧。
参考文献
編集- 横山光「洞爺湖有珠山ジオパーク・アポイ岳ジオパーク」『RikaTan(理科の探検)』第4巻第7号、文一総合出版、2010年7月、14-16頁。
- 梅沢俊、菅原靖彦『北海道夏山ガイド4 日高山脈の山々』北海道新聞社、2007年