シャルル・ボネ
シャルル・ボネ(Charles Bonnet、1720年3月13日 – 1793年5月20日)は、18世紀のジュネーヴの博物学者・哲学者である。博物学の分野では生物の発生についての先駆的な実験、考察を行った。後に哲学に転じた。
生涯
編集サン・バルテルミの大虐殺後、ユグノーであるゆえ宗教的迫害を受けフランスからジュネーヴに逃れた家系の出身であり、この地に生まれた。同じく博物学者のアブラハム・トランブレー(仏語発音はアブラム)は従兄にあたる。ジュネーヴから出ることなく、1752年から1768年の間、共和国の評議会議員となった時期を除いて、社会的な活動を行うことはなかった。16歳の時にノエル=アントワーヌ・プルーシェ(仏語発音はプリュシュ)の『自然の光景』(Spectacle de la nature) を読み、昆虫の生態に興味を持った。昆虫学者のルネ・レオミュールの著書も読み、自らも昆虫の観察を加えて1740年にアブラムシ(aphids)の「単為生殖」を確認した論文をパリの科学アカデミーに送り、アカデミーの通信会員に選ばれた[1]。
1741年からヒドラなどの生殖や再生の研究を始めた。1743年にロンドンの王立協会の会員に選ばれた[1][2]。1745年に昆虫に関する発見を記述した最初の著書 Traité d'insectologie (『昆虫論』) を出版した。1754年に植物学の著書 Recherches sur l'usage des feuilles dans les plantes (『植物における葉の機能の研究』) を出版した。その後、視力を失い哲学に転じた。1760年には Essai analytique sur les facultés de l'âme (『魂の諸能力に関する分析試論』) において[1]、視力障害者に特有な幻視の症状「シャルル・ボネ症候群」の記述をした。
他に、哲学の著作である Essai de psychologie (『心理学試論』) (1755), Considérations sur les corps organisés (『有機体論考』) (1762), La palingénésie philosophique (『哲学的新生』) (1769), 博物学の著作である Contemplation de la nature (『自然の観照』) (1764) などがある。
主な著書
編集- Traité d'insectologie (『昆虫論』) (Paris, 1745)
- Recherches sur l'usage des feuilles dans les plantes (『植物における葉の機能の研究』) (Leiden, 1754)
- Essai de psychologie, ou considérations sur les opérations de l'âme (『心理学試論』) (London, 1755) (匿名出版)〔邦訳: シャルル・ボネ『心理学試論』, 飯野和夫・沢崎壮宏訳, 国書刊行会 (十八世紀叢書第7巻『生と死』所収), 2020〕
- Essai analytique sur les facultés de l'âme (『魂の諸能力に関する分析試論』) (Copenhagen, 1760)
- Considérations sur les corps organisés (『有機体論考』) (Amsterdam, 1762)
- Contemplation de la nature (『自然の観照』) (Amsterdam, 1764)
- La palingénésie philosophique (『哲学的新生』) (Geneva, 1769)
- Œuvres d'histoire naturelle et de philosophie (『博物学哲学著作集』) (Neuchâtel, 1779-1783, 8 vol. in -4 ; 18 vol. in-8)
出典
編集- ^ a b c 沢崎壮宏・飯野和夫「ボネ『心理学試論』」(解説) (『生と死』, 十八世紀叢書第7巻, 国書刊行会, 2020 所収)
- ^ "Bonnet; Charles (1720 - 1793)". Record (英語). The Royal Society. 2012年5月27日閲覧。
参考文献
編集- Johannes Peter Müller: Über die phantastischen Gesichtserscheinungen. Jacob Hölscher, Koblenz 1826.
- Klaus Reichert: Okkulte Neurologie?. In: Christian Hoffstadt, Franz Peschke, Andreas Schulz-Buchta (Hrsg.): Wir, die Mechaniker von Leib und Seele. Gesammelte Schriften Klaus Reicherts. Aspekte der Medizinphilosophie Bd. 4. Projektverlag, Bochum/Freiburg 2006, S. 51ff. ISBN 978-3-89733-156-3