ネゲントロピー (negentropy) は、生命などのが、エントロピーの増大の法則に逆らうように、エントロピーの低い状態が保たれていることを指す用語である。単に、エントロピーを減少させる物理量、という意味でも使われる。

エントロピーとの対照性

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エントロピーは、熱力学や統計力学における「乱雑さ」を表す物理量のこと。等温可逆的な変化で、ある物質系が熱量を吸収したとき、エントロピーの増加は吸収熱量を温度で割った値に等しい。熱の出入りがない系では、熱力学の第二法則により、内部変化はつねにエントロピーが増大する方向に起こる。もし生命が系として孤立しているとすると、エントロピーは限りなく増大し(たとえば老化現象)、反対にエントロピーが下がること、つまり生命のシステムが秩序化されていくこと(若返ること)は、不可能である。生命は環境に対して開かれており、呼吸などの代謝を通して環境にエントロピーを排出することで、その補償により自己の低エントロピーを保つことができる。このような作用がネゲントロピーである。これによって生命は自己組織化され散逸構造を維持することが可能となる。ネゲントロピー単体の存在は否定されたが、非平衡系の学問の発展に寄与した。

歴史

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1943年エルヴィン・シュレーディンガーが著書「生命とは何か」で negative entropy という言葉によりその概念を提唱した[1]。その後、フランスの物理学者レオン・ブリルアンにより短縮語 negentropy という表現が用いられ、定着した[2][3]

また、『生命とは何か』の訳者註で鎮目恭夫は「ただし、....... 『負エントロピー』という言葉は、その直接の原註にもかかわらず、やっぱり誤解を招きやすい言葉だ。なぜなら、今日の物理的科学には熱力学のエントロピーと通信工学に由来する情報理論のエントロピーという二種類のエントロピーがあって、この両者が分子生物学の大学教授などによっても、しばしば混同され過誤や混乱を助長しているからだ」と述べている[4]

エントロピーは日常生活から宇宙にいたるまで考察され、ネゲントロピー理論もまた多分野に渡って考察されている。

脚注

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  1. ^ ただし、シュレーディンガー「生命とは何か」の第6章への註には、「ついでに一言すれば、後者(負エントロピー)は私の発見ではなくて、ボルツマンがはじめて論じたところとたまたまそっくり同じものです」との記述がある。
  2. ^ Brillouin, Leon: (1953) "Negentropy Principle of Information", J. of Applied Physics, v. 24(9), pp. 1152–1163
  3. ^ Léon Brillouin, La science et la théorie de l'information, Masson, 1959
  4. ^ 「21世紀前半の読者にとっての本書の意義 -岩波文庫への収録(2008年)に際しての訳者あとがき-」『生命とは何か』岩波書店、214-215頁。 

参考文献

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  • Nature 474, 61–63 (02 June 2011). https://www.nature.com/articles/nature10123
  • エルヴィン・シュレディンガー 著、岡小天鎮目恭夫 訳『生命とは何か: 物理的にみた生細胞(岩波文庫版)』岩波書店、2008年、214-215頁。ISBN 9784003394618 

関連項目

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外部リンク

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