ベーカリー

ベーカリー（英: Bakery）は、パンやケーキ、ペイストリー、パイなどオーブンで焼いた穀粉ベースの食物を調理し、販売する施設である^[1]。店舗の中ではコーヒーや紅茶などの飲み物やスープやサンドイッチなどの軽食を販売したり、イートイン施設を備えたカフェを兼ねたところもある。日本ではパン屋（パンや）と呼ぶことが多い。なお、フランス語あるいはフランスパンを販売している店舗はブーランジュリー（仏: Boulangerie）と呼ぶ。

一部のパン屋では、結婚式や誕生日、記念日やビジネス上のイベントなど特別な日には、シートケーキやレイヤーケーキ、テーラードケーキやウェディングケーキなど様々な種類のケーキを提供するサービスも行っている。また、職人が漂白剤や小麦粉処理剤など使わず、地元で収穫および製粉された小麦粉を用いて焼いたパンを専門としている店舗もある。

多くの食料雑貨店やスーパーマーケットでは、工場から送られてきたパンとケーキを多く取り扱う。一方で、店内で製造した高品質なパンを売るパン専門店を好む消費者もいる。

歴史

パンなどのオーブンで焼いた食べ物（以下、「パン類」と表記）は、何千年も前から存在し、製パンの技術はローマ帝国の初期に発展した。ローマ市民はパン類を好み、宴会や結婚式などの重要な場で頻繁に求められたことから、非常に有名な技術であった。製パン技術が著名となったことにより、紀元前300年頃にはパン職人は職業、それもローマ人の誇り高き職業として成立した。パン職人は製粉機で小麦を小麦粉に挽き、自宅のオーブンでパンを焼き始めた。パン類の需要は続き、紀元前168年にはローマで初めてパン職人のギルドが結成された。パン類の需要の高まりにより、ヨーロッパ全土に製パンが広がり、アジアの東側にも拡大した。パン職人は自宅でパン類を焼き、路上で販売し始めた。これが一般化すると、需要の増大に伴い、パン類の宅配システムが成立した。また、パン職人は人々がパン類を購入できる場を設けるようになった。最初の屋外市場はパリで成立して以来、パン屋はおいしい商品を購入する場として、社交の場として一般化した。このようにして、パン屋は近世までに一般的に普及した^[2]。

1928年7月7日、ミズーリ州チリコシーのパン屋がオットー・フレデリック・ローウェダー（英語版）の発明した自動でパンをスライスする機械を導入し、スライスしたパン（英語版）の販売を開始した。このスライスパンは見た目が「ぐちゃぐちゃ」で、すぐに傷んでしまうことから売れなかったが、後に人気商品となった^[3]。第二次世界大戦中は、金属回収のためパンのスライス機は事実上禁止された。パンのスライス機から100トンの金属合金を徴用する決定は、主婦たちにとって非常に不評であった^[4]。イギリスにおいても第二次大戦はパン産業に直接的な影響を及ぼした。同時代に製パン学校が閉鎖されたことで、戦後に熟練のパン職人が不足した。そこで、世界の人々のパンに対する欲求を満たすために、化学添加物、プレミックス、専用機械といった新たな方法が開発された。新たな方法の導入と製パン業界の工業化により、古い製パン技術はほぼ完全に途絶えた。旧来の技術は不必要で不経済であると見なされ、この時代に伝統的な技術を持つパン屋はほとんど残っていない。