氏名権(しめいけん)とは、氏名を他人に使用させず、排他的に占有しうる権利であり、人格権の一つである。

概要

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ドイツ民法(BGB)では、実定法上の個別的人格権の一つとして、第12条「氏名権」("§12 BGB Namensrecht." ナーメンスレヒト)[1]を定めており、氏名権侵害に対し同823条(§823 BGB)[2]に基づく損害賠償請求できる(オーストリアスイスなどのドイツ法に倣う民法を持つ国においても同様の規定が存在する[3])。もっともドイツの裁判所においては、氏名権、商標権、及び「著作権の人格権的要素」など法において明文化された個別的人格権を保護法益として認める一方、これらを含めた「一般的人格権」は、BGB 823条1項("§823 Abs. 1 BGB")に列挙されているような損害賠償の対象となる保護法益[注釈 1]には含めないとの考えが1920年代後半まで支配的であった[4]。しかしその後著作権関連の判例を通じて積極的に人格権を保護するようになった(同時に「著作権の人格権的要素」は著作者人格権として正式に分離される)[4]

コモン・ローでは氏名権は一切認められていない[3]

氏名権 (日本)

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日本実定法において、氏名権(しめいけん)の明文規定は存在せず、日本国憲法第13条幸福追求権)を根拠規定として判例により確立されてきた[5]不文法)。

人格権または「人格的な利益」に相当の故、侵害行為に対して不法行為法上の保護法益であると認めた判例がある(昭和58年(オ)第1311号 謝罪広告等請求事件、昭和63年2月16日最高裁判決[6][7]

氏名権は次の具体的な権利・法益からなる[8]

  • (氏名呼称権) 氏名を正確に呼称される利益[9]
  • (氏名専用権) 氏名を他人に冒用されない権利・利益[10]

脚注

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注釈

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  1. ^ 現代では人格権の範疇に含まれるはずの生命(Leben)、身体(Körper)、健康(Gesundheit)、自由(Freiheit)又はその他の権利(oder ein sonstiges Recht)。近年の法改正でこれに「財産」(Eigentum)が加わった。

出典

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  1. ^ §12 Namensrecht”. BMJ. 2011年9月28日閲覧。
  2. ^ §823 Schadensersatzpflicht”. BMJ. 2011年12月12日閲覧。
  3. ^ a b Christian von Bar, 勅使河原和彦. “Persönlichkeitsrechtsschutz im gegenwärtigen und zukünftigen deutschen internationalen Privatrecht(ドイツ国際私法における人格権保護の現在と未来)” (PDF) (日本語). www.waseda.jp. 2011年9月28日閲覧。
  4. ^ a b 木村和成. “ドイツにおける人格権概念の形成(2・完)”. www.ritsumei.ac.jp. pp. 195. 2011年12月12日閲覧。
  5. ^ "学説 我が国において、氏名権は、法律に明文の規定はないものの、人格権の一内容を構成するものとして、学説・判例によって認められている。" 特許庁. (2021). 他人の氏名等を含む商標に関する調査研究. 令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業. より引用
  6. ^ 最高裁判所第三小法廷判決 1988年2月16日 、昭和58(オ)1311、『謝罪広告等請求事件』。
  7. ^ 関堂幸輔. “第13講 氏名・肖像に関する権利”. www.sekidou.com. 2011年9月28日閲覧。
  8. ^ "氏名権の内容については、複数の学説において、氏名を他人に冒用されない権利(氏名専用権)、氏名を正確に呼称される権利・利益(氏名呼称権)が挙げられている。" 特許庁. (2021). 他人の氏名等を含む商標に関する調査研究. 令和3年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業. より引用
  9. ^ "人は、他人からその氏名を正確に呼称されることについて、不法行為法上の保護を受けうる人格的な利益を有する ... 氏名を正確に呼称される利益" 最高裁判所. (1988). 謝罪広告等請求事件 (NHK日本語読み訴訟事件) 全文. より引用
  10. ^ "氏名を正確に呼称される利益は、氏名を他人に冒用されない権利・利益と異なり、その性質上不法行為法上の利益として必ずしも十分に強固なものとはいえない" 最高裁判所. (1988). 謝罪広告等請求事件 (NHK日本語読み訴訟事件) 全文. より引用

関連項目

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外部リンク

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