潜在精巣

精巣が本来あるべき陰嚢内に収まっていない先天性異常

潜在精巣(せんざいせいそう、: cryptorchidism)とは、精巣の下降が不完全で鼠径管ないし腹腔内に停留し、陰嚢内に納まっていない状態のことを言う。停留精巣(ていりゅうせいそう)、陰睾、停留睾丸とも呼ばれる。潜在精巣では精巣が高い温度条件下にあるため、正常な精子を生産することができず、精巣のアンドロゲン分泌機能も阻害される傾向にある。したがって、両側性の潜在精巣である場合は生殖能力がないのに対し、片側性の場合は生殖能力は低下するものの、完全に失われるわけではない。

潜在精巣
概要
診療科 遺伝医学
分類および外部参照情報
ICD-10 Q53
ICD-9-CM 752.5
OMIM 219050
DiseasesDB 3218
MedlinePlus 000973
eMedicine med/2707 radio/201 ped/3080
MeSH D003456

ヒトにおける停留精巣

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新生児の4.1%〜6.9%に発生し、特に低体重児では19.8%〜22.5%と高頻度に発生する[1]。生後半数以上が自然降下するが、その時期はほとんど生後3ヵ月以内[1]。生後6ヵ月までは自然降下を期待して経過観察とするが、将来の妊孕性を考慮し、1歳前後、遅くとも2歳までに精巣固定術を行う[1]。腹部に停留している場合、90%は思春期までに精細胞が完全に消滅する。しかしながら陰嚢上部に留まれば20%程度の消滅にとどまり、停留部位によって危険性は異なる。 下垂体性性ホルモン欠損症例ではhCG/GnRHによるホルモン療法で精巣の下降が期待できる場合もある。また、多くの場合において第二次性徴は普通に発来するが、一部に遅延する症例も見られる。

また、外科的な精巣固定手術のみではなく、hCG/hMG、テストステロンなどによるホルモン療法が必要になる事が多い[2]。なお、停留精巣の者は、精巣固定手術の実施の有無にかかわらず、精巣腫瘍を発症するリスクが一般男性と比べ3倍~14倍と高い。[3][4]

獣医学領域における潜在精巣

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チワワの潜在精巣

ウマ、ブタ、イヌで多くみられ、ヒツジ、ヤギにもみられ、ウシで少なく、ネコではまれ。イヌではセルトリ細胞腫の素因となることが知られているため、潜在精巣の早期の摘出が推奨される。潜在精巣は遺伝的要因によることが示唆されているため、生殖能力を失っていなくても繁殖に供用するべきではない。ゾウやクジラでは精巣下降は起こらず、精巣は腹腔内に留まったままであるが、このことが生殖能力に障害をもたらすことはない。

脚注

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  1. ^ a b c イヤーノート 2015: 内科・外科編 E124 メディック・メディア ISBN 978-4896325102
  2. ^ 『内分泌疾患 性機能障害』
  3. ^ 精巣(睾丸)腫瘍
  4. ^ がんに関する情報 精巣がん”. がん研有明病院. 2020年1月7日閲覧。

関連項目

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参考文献

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  • 吉田修 監修 『新 図説泌尿器科学講座 4 内分泌疾患 性機能障害』メジカルビュー 1999年12月
  • 獣医学大辞典編集委員会編集 『明解獣医学辞典』 チクサン出版 1991年 ISBN 4885006104
  • 山内亮監修 『最新家畜臨床繁殖学』 朝倉書店 1998年 ISBN 4254460201
  • 日本獣医内科学アカデミー編 『獣医内科学(小動物編)』 文永堂出版 2005年 ISBN 4830032006

外部リンク

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