無水酢酸

酢酸2分子が脱水縮合したものに相当するカルボン酸無水物の一種

無水酢酸(むすいさくさん、acetic anhydride)とは、カルボン酸無水物の一種で、酢酸2分子が脱水縮合したものに相当する。

無水酢酸
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識別情報
CAS登録番号 108-24-7 チェック
PubChem 7918
ChemSpider 7630 チェック
UNII 2E48G1QI9Q チェック
EC番号 203-564-8
国連/北米番号 1715
ChEBI
ChEMBL CHEMBL1305819
RTECS番号 AK1925000
特性
化学式 C4H6O3
モル質量 102.09 g mol−1
外観 無色の液体
密度 1.082 g cm−3, 液体
融点

−73.1 °C, 200 K, -100 °F

沸点

139.8 °C, 413 K, 284 °F

への溶解度 2.6 g/100 mL, 反応(本文参照)
蒸気圧 4 mmHg (20 °C)[1]
磁化率 −52.8·10−6 cm3/mol
屈折率 (nD) 1.3901
危険性
安全データシート(外部リンク) ICSC 0209
GHSピクトグラム 可燃性腐食性物質急性毒性(低毒性)
GHSシグナルワード 危険(DANGER)
Hフレーズ H226, H302, H314, H330
Pフレーズ P210, P233, P240, P241, P242, P243, P260, P261, P264, P270, P271, P280, P301+312, P301+330+331
NFPA 704
2
3
1
引火点 49 °C (120 °F; 322 K)
発火点 316 °C (601 °F; 589 K)
爆発限界 2.7–10.3%
許容曝露限界 TWA 5 ppm (20 mg/m3)[1]
半数致死濃度 LC50 1000 ppm (rat, 4 h)[2]
関連する物質
関連する酸無水物 無水プロピオン酸
関連物質 酢酸
塩化アセチル
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

純酢酸(氷酢酸とも)と混同されることがあるが、純酢酸とは水をほとんど含まない、純度がほぼ100%の酢酸のことで、異なる化合物である。

性質

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無色で強い酸味と刺激臭を持つ液体。蒸気は催涙性を持っており、液体を皮膚に付着させると水疱炎症を生じる。

エタノールに易溶だが、徐々に反応して酢酸エチルとなる。また、エーテルベンゼンニトロベンゼンなどにも溶ける。には約2.7%溶けて、徐々に反応して酢酸となる。この反応はの存在により促進される。強塩基と反応させると酢酸塩となる。

合成法

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工業的にはケテンと酢酸を反応させて製造される。あるいは無水塩化アルミニウム触媒とした酢酸とホスゲンの反応や塩化アセチル酢酸ナトリウムの反応でも生成する。

無水酢酸の 2010年度日本国内生産量は 241,291 t、販売出荷量は 39,828 t であった[3]。大部分は同一工場内でアセチルセルロースなどの原料として使用されている。

反応

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カルボン酸無水物の反応性を持つ。塩基、または酸を触媒として、酢酸誘導体の合成に用いられる。例えば、アルコールと反応すると酢酸エステルが、アミンと反応するとアセトアミド誘導体が得られる。

用途

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酢酸セルロース繊維の原料、アスピリン等の医薬品製造、香料染料等の合成原料など。

法規制

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麻薬等の製造過程で使用される(モルヒネと化合させるとヘロインが出来る)ことから、平成13年11月25日に施行された、改正・麻薬及び向精神薬取締法により、日本では「特定麻薬向精神薬原料」に指定された。アメリカ合衆国ではDEA規則により使用と販売が制限されている。

2016年に改正された毒物及び劇物指定令によって、7月15日より本品およびこれを含む製剤が劇物に指定されている[4][5]

また引火性があるため、大量貯蔵管理に際しては危険物取扱者免許を要する(危険物第四類第2石油類)。

出典

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  1. ^ a b NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0003
  2. ^ Acetic anhydride”. 生活や健康に直接的な危険性がある. アメリカ国立労働安全衛生研究所英語版(NIOSH). 2024年12月25日閲覧。
  3. ^ 経済産業省生産動態統計年報化学工業統計編 - 経済産業省
  4. ^ 毒物及び劇物指定令の一部改正について(通知)平成28年7月1日 薬生発0701第1号 [1]
  5. ^ 毒物及び劇物指定令 第二条 [2]

関連項目

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