登木目

哺乳綱に属する動物の分類のひとつ

登木目(とうぼくもく、学名:Scandentia)は、哺乳綱に分類される目。別名ツパイ目[4]登攀目(とうはんもく)[5][6]攀登目(はんともく)[2]

登木目
コモンツパイ
コモンツパイ Tupaia glis
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
階級なし : 真主齧類 Euarchontoglires
: 登木目 Scandentia
学名
Scandentia Wagner, 1855[1][2]
和名
登木目[3][4]

外見、行動はリスに似ているが、系統的には全く別の動物である。昆虫果実を食べ、東南アジア熱帯雨林に生息している。樹上性で、長い尾を持ち、やや細身のリスのような姿である。頭部は鼻が尖り、耳が小さい。

基本的な体の食構成は食虫類のものとよく似ており、実際食虫類に分類されていた。しかしながら、が大きい点で霊長目に似た外観を有し、かつ霊長目の種と比べて原始的な頭骨の特徴を持つため、20世紀初頭には最も原始的な霊長目のメンバーとして、霊長目に分類された。1960年代以降、系統上の再検討が加えられた結果、再び食虫類に戻される傾向が強まったが、現在では、その形質は非常に原始的な哺乳類の特徴をよく残したものであると認められ、独立した目として扱われる。

いずれにせよ、登木目が、霊長目食虫類の中間的な特徴を備えていることは重要である。

生態

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2008年のアメリカ科学アカデミー紀要(PNAS)によると、ツパイ目の一種ハネオツパイは、ヤシ科ブルタムヤシ英語版の花や花芽から分泌される蜜が発酵して最大数%のアルコールを含むようになった液体を、主要なエネルギー源として日常的に摂取していることがわかり、飲酒の習慣を持つ動物として話題となった[7]。 人間に換算するとビールの大瓶を毎日7-8本摂取しているアルコール量になるが、体内の特別な酵素によって摂取したアルコールを速やかに体外に排出しているのではないかと考えられている。現在では516が知られており、そのうち4が昼行性である。拇指の対向性は十分でない。

分類

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名前のtupaiはマレー語やインドネシア語で「リス(本目のようにリスのような動物も含む)」を指す語に由来する[2]。古くは英名treeshrew(shrewはジネズミやトガリネズミの意だが、食虫目に含まれると考えられていたため)を直訳して「キネズミ」、独名Spitzhornchen(鼻口部の尖ったリスの意)の直訳である「トガリリス」や意訳である「リスモドキ」が和名として使用されることもあった[2]。目名Scandentiaは「登る」の意[6]

骨格や歯から食虫目に含まれると考えられていたが、1920年代に眼や脳・盲腸などの内部形態から霊長目の祖先から分岐した生物とする説が提唱された[2]。1945年には霊長目に含む体系が発表された[2]。1980年代以降は霊長目に含めず、独立した目を形成する説が有力とされる[2]。2000年代以降は分子系統推定の結果から霊長目・皮翼目とともに真主獣類を構成すると考えられているが[8]、齧歯目・兎形目からなるグリレス類の姉妹群とする結果も得られている[9]

以下の分類・英名は、Helgen(2005)に従う[1]。和名は川田ら(2018)に従う[3]

画像

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出典

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  1. ^ a b Kristofer M. Helgen, "Order Scandentia," Mammal Species of the World, (3rd ed.), Volume 1, Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 104 - 109.
  2. ^ a b c d e f g 岩本光雄 「サルの分類名(その7:総説とメガネザル)」『霊長類研究』第5巻 1号、日本霊長類学会、1989年、75 - 80頁。
  3. ^ a b 川田伸一郎他 「世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1 - 53頁。
  4. ^ a b 田隅本生哺乳類の日本語分類群名,特に目名の取扱いについて —文部省の“目安”にどう対応するか—」『哺乳類科学』第40巻 1号、日本哺乳類学会、2000年、83 - 99頁。
  5. ^ 遠藤秀紀・佐々木基樹 「哺乳類分類における高次群の和名について」『日本野生動物医学会誌』第6巻 2号、2001年、45 - 53頁。
  6. ^ a b Pat Morris, Amy-Jane Beer「ツパイ類,ハネジネズミ類」「コモンツパイ」本川雅治訳『知られざる動物の世界 1 食虫動物・コウモリのなかま』前田喜四雄監訳、朝倉書店、2011年、52 - 55頁。
  7. ^ Frank Wiens et al. (2008). “Chronic intake of fermented floral nectar by wild treeshrews.”. PNAS (National Academy of Sciences) 105 (30): 10426-10431. doi:10.1073/pnas.0801628105. https://www.pnas.org/content/105/30/10426. 
  8. ^ 西岡佑一郎・楠橋直・高井正成「哺乳類の化石記録と白亜紀/古第三紀境界前後における初期進化」『哺乳類科学』第60巻 2号、日本哺乳類学会、2020年、251 - 267頁。
  9. ^ Sandra Álvarez-Carretero, Asif U. Tamuri, Matteo Battini, Fabrícia F. Nascimento, Emily Carlisle, Robert J. Asher, Ziheng Yang, Philip C. J. Donoghue & Mario dos Reis, “A species-level timeline of mammal evolution integrating phylogenomic data,”Nature, Volume 602, 2022, Pages 263 - 267.

関連項目

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