航空
航空(こうくう)とは、何らかの装置を用いて飛行することである[1]。
航空という言葉はフランス語を語源とする "aviation" に対応した日本語であり、aviation は鳥を意味する "avis" と接尾辞の "-ation" を組み合わせた言葉である[1][2][3]。
概説
編集航空機
編集飛行に用いる装置を航空機と言い、空気より軽い「軽航空機」と空気より重い「重航空機」に分類され[4]、航空という言葉は一般に重航空機の飛行に関して用いられる[2]。軽航空機には気球や飛行船が含まれ、重航空機には固定翼や回転翼を備えた飛行機、グライダー、ヘリコプターなどが含まれる[5]。
民間・軍事
編集航空はその目的により、「民間航空」と「軍事航空」に分けることができる[1]。民間航空は軍事航空以外の全ての航空活動を指し、航空輸送や航空機を用いた調査・測量、航空スポーツなどが含まれる[6]。警察や消防、海上保安庁などの公的な航空活動は民間航空に含むが、政府が直轄する救難・監視目的の活動は含まれない場合がある[1][6]。
航空産業
編集航空に関する産業「航空産業」には、航空機の設計・生産・販売・メンテナンスに携わる「航空機産業」、人や貨物等を輸送する「航空運送」、そして航空機を用いて運送以外の薬剤散布、写真撮影、広告宣伝などを行う「産業航空」が含まれる[7][8][9]。航空をシステムとして見ると、航空機の製造者、航空機の運用者(航空会社など)だけでなく、政府や国際機関、大学・研究機関、金融機関などが密接かつ複雑に関係している[10]。
学問
編集航空に関する学問分野には、航空のための技術および科学のあらゆる研究分野を含めた広い学問として「航空学」があり、飛行する航空機の各部に働く空気力やその運動を扱う「航空力学」や、航空機の設計、試験、製造および運用を扱う「航空工学」などがある[11][12][13][14]。
その他
編集航空の歴史を航空史と言い、航空が関連する事故を航空事故と言う。
歴史
編集航空の歴史を「航空史」と言う。
概略を言うと、おおむね中世の滑空機の実験の歴史から始まり、熱気球や飛行船の開発・運航などの歴史を経て、その後の飛行機他の多種多様な航空機にまつわる膨大な量の諸活動がそこに含まれる。航空機産業や航空会社の歴史や航空行政の歴史もここには含まれる。広くは、日本語で「航空宇宙産業」などと呼ばれる領域の歴史も含み、その場合スペースシャトルなどの設計・開発・運用等の歴史もここには含まれる[15]。
目的による分類
編集民間航空
編集民間航空(英: civil aviation)とは、軍事航空以外の全ての航空の総称であり、一般航空と航空運送事業に分けられる。日本の航空法は英訳でCivil Aeronautics Act[16]となっている通り、民間航空に対する法律である。
国際的には、国際民間航空機関 (ICAO)が、技能証明、航空規則、気象、航空図、計測単位、運航安全、登録、耐空性、空港での出入国、通信装置、交通管制の運用、遭難救助、事故調査、飛行場設計、航空情報収集・伝達の方法、環境保護、航空保安、危険物輸送、安全管理に関して国際基準、勧告、ガイドラインを作成している[17]。
航空運送事業
編集民間企業によって営まれている航空の中でも、特に旅客機や貨物機を使用する旅客・貨物輸送事業を指している。航空運送の担い手が航空会社(エアライン)である。
日本の航空法で航空運送事業は、「他人の需要に応じ、航空機を使用して有償で旅客又は貨物を運送する事業」と定義され、国際航空運送事業と国内定期航空運送事業等の区別がある。かつて日本の航空法は航空運送事業を定期航空運送事業と不定期航空運送事業・利用航空運送事業に分けていたが、現在その区別はなくなっている。
航空機使用事業
編集日本の航空法では、「他人の需要に応じ、航空機を使用して有償で旅客又は貨物の運送以外の行為の請負を行う事業」と定義されている。
具体的な事業内容は、写真撮影、報道取材、農薬散布、操縦訓練、送電線巡視などであり、回転翼機(ヘリコプター)で行われることが多い。
一般航空
編集ジェネラルアビエーション(英: general aviation, 一般航空)とは、民間航空のうち航空運送事業を除いた、あらゆる航空活動を指す概念・用語である。日本では「ジェネアビ」と略されることもある。
ジェネラルアビエーションは以下の4つに大きく分けられる。
日本では自家用機の数が少ないなどの事情があるため、「ジェネアビ」と言いながら専ら「産業航空」を指していることがある。
軍事航空
編集軍事航空とは、軍事に用いる航空機(軍用機)の設計・開発・製造・運用・利用を指している。
結果として、航空機を利用した、直接的な戦闘行動(空中戦・爆撃など)や、地上・海上の軍事行動の支援(偵察・輸送・連絡など)といった軍の活動を指す。空軍のそれが大きな割合を占めるが、海軍や陸軍その他の軍も航空機を利用しておりそれらの活動も指す。
航空事故
編集航空が関連する事故、特に航空機の運航中の事故を航空事故と言う。主なものでは、墜落、不時着、オーバーラン、衝突、火災などがある。
単位系・計量制度への影響
編集航空においては、ヤード・ポンド法由来の単位であるフィート、マイル(航空においては海里を指す)、ノット、水銀柱インチが標準的に使用されている。フィート、マイル、ノットは飛行機の降下において極めて重要かつ簡便な計算式を与える[注釈 1]。水銀柱インチは高度計規正値の単位に用いると高度計の表示変化がわかりやすくなる[注釈 2]。この為、国際単位系や各国の計量制度・法令において目的を限定した上で使用が認められている。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b c d 落合一夫「航空」『日本大百科全書(ニッポニカ) / JapanKnowledge Lib』小学館 。2015年11月4日閲覧。
- ^ a b 「航空史」『ブリタニカ国際大百科事典 大項目事典』ブリタニカ・ジャパン 。2015年11月4日閲覧。
- ^ “プログレッシブ英和中辞典”. 2015年11月4日閲覧。
- ^ 落合一夫「航空機」『日本大百科全書(ニッポニカ) / JapanKnowledge Lib』小学館 。2015年11月4日閲覧。
- ^ 「航空機」『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ブリタニカ・ジャパン 。2015年11月4日閲覧。
- ^ a b 「民間航空」『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ブリタニカ・ジャパン 。2015年11月4日閲覧。
- ^ 東京大学航空イノベーション研究会, 鈴木真二 & 岡野まさ子 2012, 「まえがき」
- ^ 山田奬「航空機産業[現代産業]」『情報・知識 imidas 2015 / JapanKnowledge Lib』集英社 。2015年11月4日閲覧。
- ^ 秋葉明「航空輸送」『日本大百科全書(ニッポニカ) / JapanKnowledge Lib』小学館 。2015年11月4日閲覧。
- ^ 東京大学航空イノベーション研究会, 鈴木真二 & 岡野まさ子 2012, 「目的と対象範囲」
- ^ 落合一夫「航空力学」『日本大百科全書(ニッポニカ) / JapanKnowledge Lib』小学館 。2015年11月4日閲覧。
- ^ 「航空学」『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ブリタニカ・ジャパン 。2015年11月4日閲覧。
- ^ 「航空工学」『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ブリタニカ・ジャパン 。2015年11月4日閲覧。
- ^ 「航空力学」『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ブリタニカ・ジャパン 。2015年11月4日閲覧。
- ^ 例えば、Millbrooke 1999 などが含んでいる
- ^ 法務省・日本法令外国語訳データベース
- ^ 国際民間航空機関(ICAO) - 外務省
参考文献
編集- 東京大学航空イノベーション研究会; 鈴木真二; 岡野まさ子 編『現代航空論 : 技術から産業・政策まで』東京大学出版会、2012年。ISBN 978-4-13-072150-9 。
- Millbrooke, Anne Marie (1999), Aviation history, Jeppesen Sanderson, ISBN 0884872351
関連項目
編集- 交通(上位項目)
公共機関関係
編集- 航空局 - 航空法 - 耐空証明 - 型式証明 - 型式承認 - 仕様承認 - 予備品証明 - 修理改造検査
- 国際連合 - 国際民間航空機関(ICAO) - 国際民間航空条約(シカゴ条約)
- 国際航空運送協会(IATA) - 航空運賃
- 呼出符号(コールサイン)
- 航空交通管制 - 航空保安設備(施設) - レーダーサイト - 航空管制官
- 飛行場・空港 - 空港コード - 着陸料
- 航空事故
- トランスファー - トランジット