Il-80 (航空機)
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イリューシン80
Ил-80(Il-80)
Il-80(イリューシン80)は、Il-86旅客機をベースに改造された[1]、ロシアの空中指揮機である[2]。
北大西洋条約機構(NATO)により、「マックスドーム」(Maxdome)というNATOコードネームが割り当てられている[3]。
この航空機は、核戦争などによって、地上での指揮が取れない際にロシア連邦大統領や軍事指導者が搭乗し、軍を指揮出来るように設計されている[2]。
衛星を含む通信機器、空中給油装置、強力な発電機などを装備し、空中での長時間の指揮を可能としているほか、ミサイル防御のための電子戦機器、赤外線フレアおよびレーダーを撹乱するチャフの散布装置、核爆発の際に発生する電磁パルス (EMP) を遮断する電磁シールドを装備しており、前方のコックピット以外の窓は閉鎖されている[1][2]。そのため、イリューシン80は通称で「終末の日の飛行機」や「空飛ぶクレムリン」と呼ばれている[2][4][5]。
2021年時点で、開発中であるIl-96-400Mをベースにした機体が後継機として候補に上がっている[6]。
仕様
編集諸元
編集- 乗員: 5人
- 全幅: 48.1m
- 全長: 59.5 m
- 全高: 15.8 m
- 翼面積: 320m2
- 通常離陸重量: 208,000kg
- 動力: クズネツォフ NK-86 ×4
性能
編集- 最高速度: 970km/h
- 巡航速度: 850km/h
- 航続距離: 3,600 km
- 実用上昇限度: 11,000 m
通信機器の盗難
編集2020年12月7日、機密保持のため厳重な警備がされているはずの国営タガンログ航空科学技術複合体 (Taganrog Aviation Scientific and Technical Complex) で、定期機体整備のため駐機していたイリューシン80の一機から39の通信機器と5つの電子ボードが盗難に遭っていたことが発覚した[1][7]。窃盗犯は貨物室のハッチから侵入しており、当局によって指紋や下足痕が採取された[1][8]。盗難に遭った機器は金やプラチナなどの貴金属が使用されており、当局によると盗難総額は約100万ルーブル(約US13,600ドル)と報じられた[9][10]。
同年12月26日には統一航空機製造会社は、タガンログ到着直後に機密関連機器は全て取り外されており、その「事件」の際には航空機の機能に関係ない補助的な機器が「行方不明」になったと発表した[11]。
2022年対独戦勝記念パレード
編集ウクライナ侵攻中にモスクワの赤の広場で開催されることになった2022年5月9日の第77回戦勝記念日のパレードでは、イリューシン80が聖ワシリイ大聖堂の上空を飛行するとロシア政府より発表され、予行演習がなされた[13][14][15]。イリューシン80が戦勝記念日において飛行するのは2010年の第65回戦勝記念日以来で、核戦力を誇示し「終末の日」を欧米諸国に示唆する警告ではないかと報道された[4][13][14]。
しかし記念日当日に「天候不良」を理由に航空機の飛行パレードは中止され、会場である赤の広場の上空は青空だったにも関わらずイリューシン80が式典中に飛来することはなかった[16][17]。
出典
編集- ^ a b c d “Thieves _target Russia's nuclear war ‘doomsday’ plane” (英語). the Guardian (-2020-12-08). 2022年5月7日閲覧。
- ^ a b c d “The Ilyushin Il-80: Here's all we know about Russia's doomsday plane” (英語). interestingengineering.com (2022年3月23日). 2022年5月6日閲覧。
- ^ Il-80 / Il-86VKP / Il-87 Maxdome https://www.globalsecurity.org/military/world/russia/il-87.htm
- ^ a b 「プーチン氏、対独戦勝記念日に「終末の日」示唆か 西側に警告」『Reuters』2022年5月6日。2022年5月6日閲覧。
- ^ “'Flying Kremlin': Russia's Powerful Aircraft Designed For A Potential 'Nuclear War' Spotted Over Moscow” (英語). Latest Asian, Middle-East, EurAsian, Indian News (2022年5月4日). 2022年5月14日閲覧。
- ^ Bratersky, Alexander (2021年7月27日). “Russia is producing two new Doomsday planes, says government news agency” (英語). Defense News. 2022年5月7日閲覧。
- ^ “Russian 'doomsday' plane's radio equipment stolen by thieves” (英語). BBC News. (2020年12月8日) 2022年5月14日閲覧。
- ^ a b “New Evidence Appears In The Doomsday Plane Theft Case” (英語). Then24 (2021年6月13日). 2022年5月14日閲覧。
- ^ “Russia looking for thieves who hit Putin’s nuclear ‘Doomsday Plane’ - National | Globalnews.ca” (英語). Global News (2022年12月9日). 2022年5月14日閲覧。
- ^ AFP, Anna Smolchenko for (2020年12月9日). “Kremlin Sounds Alarm Over 'Doomsday Plane' Robbery” (英語). The Moscow Times. 2022年5月14日閲覧。
- ^ “Il-80 / Il-86VKP / Il-87 Maxdome”. www.globalsecurity.org. 2022年5月14日閲覧。
- ^ “Суд арестовал обвиняемого в краже из самолета Ил-80 в Таганроге” (ロシア語). タス通信 (2021年1月19日). 2022年5月14日閲覧。
- ^ a b Slisco, Aila (2022年5月6日). “Russia plans to send message by flying nuclear "doomsday" plane at parade” (英語). Newsweek. 2022年5月7日閲覧。
- ^ a b Faulconbridge, Guy (2022年5月6日). “Putin to send 'doomsday' warning to West at Russia's WW2 victory parade” (英語). Reuters 2022年5月7日閲覧。
- ^ “ロシア戦勝記念日、核戦争用の指揮機も飛行へ 西側諸国に警告か”. 朝日新聞デジタル (2022年5月8日). 2022年5月9日閲覧。
- ^ “ロシア軍事パレードに「終末の日の飛行機」登場せず…プーチン氏 SPの手に核のカバン?”. FNNプライムオンライン (2022年5月9日). 2022年5月9日閲覧。
- ^ (日テレNEWS): “本当は飛ばしたかった? ロシア軍事パレードの目玉“終末の日の飛行機”が飛行中止”. Yahoo!ニュース (2022年5月10日). 2022年5月9日閲覧。
参照
編集- Il-80 / Il-86VKP / Il-87 Maxdome - GlobalSecurity.org
関連項目
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